萌香のいない日に(1)
文字数 1,709文字
萌香たちが、この時空の新田有希を大悪魔ブラウの魔手から救出せんと静岡の地方都市に向かっていたその頃、異星人討伐隊作戦室には、いつも以上に気の抜けた雰囲気が満ち溢れていた……。
風祭隊員はと云うと、机に足を掛けて座り、リボルバーの何度目かの手入れを行っている。
「今日は、お嬢様はお休みか……。じゃぁ折角の日曜日だってのに、剛霊武 獣の出現は無しってことだな」
そう。討伐隊メンバーにも、剛霊武 獣の出現は、入生田萌香の出勤日であると云うことが、何となく伝わっていたのだ。
「おい、風祭。剛霊武 獣が出ないからと言って、気を抜くんじゃない! 異星人テロリストが暴動を起さないとは、言い切れはしないんだぞ!!」
小田原隊長が風祭隊員に注意をする。だが、明らかに彼も、暗に今日は剛霊武 獣の出現が無いと言っている。事実、彼は剛霊武 獣の出現を知る手立てを持っているし、それにより、今日の剛霊武 獣のテロ活動が無いことは、ちゃんと事前に知っていたのだ。
「非常勤はいいわよね……。湯本隊員、臨時でお休みにしたんでしょう?」
板橋隊員も、今日のデスクワークは何も残っていないようで、机に座った儘、ずっとネイルの手入れを行っている。
「湯本の奴、宿題が溜まっているとかって理由で休暇申請してたけど、お嬢様が休みってのを聞いて、暇なのを見越して休みを申請したに違いないぜ!」
風祭隊員が、皆に聞こえるのも構わず独り言を言った。だがそんなこと、小田原隊長も板橋隊員も、言われるまでもないことなので、別に敢えて同意の言葉を返すことなどはしなかった。
小田原隊長自身、暇を持て余している。
彼は風祭隊員に、剛霊武 獣に関連しないテロリスト活動について言及したのだが、そんなことが起こらないことも確信していた。
異星人テロリストは、大悪魔女帝との繋がりがあるらしく、基本的に剛霊武 獣の出現と連動して行動を起す。この為、入生田隊員の出勤しない日は、異星人テロリストの反社会活動が行われることは、まず、あり得なかったのである。
「隊長、ヌディブランコで、市内パトロールに行って来ていいですかぁ?」
「おい、勝手な行動は駄目だ。今日は特別人数が少ないんだ。それに、ヌディブランコと云う足まで奪われては、何かあった時に何も出来ないだろう!!」
「そりゃ、そうですけどね……。絶対、何も無いですよ……」
風祭隊員も、流石にその台詞を口に出すのは控えた。その代わり……。
「了解です。じゃぁ俺は、地下の射撃練習場にでも行ってますよ。万が一、異星人テロリストが暴れ出すことがあったら……、通信機か何かで、俺を呼出してください」
そう言って、風祭隊員は小田原隊長の許可の言葉もそこそこに、欠伸をしながら作戦室を出て行ってしまう。
「仕方ない奴だなぁ……。姉ちゃんに余程甘やかされてたんだろうな、あいつ」
小田原隊長は、小さく呟く。だが、それは板橋隊員には聞こえなかった様で、彼女は黙々とネイルの手入れをし続けていた。
風祭隊員は地下の射撃練習場に着くと、入口のセキュリティーロックを解除し、中へと入っていく。作戦室と同じように、同時に2人以上が入って来ないように、ここも二重ドアになっていた。
銃の所持が認められている風祭隊員でも、この施設では備え付けの銃の使用が義務付けられている。それは特殊な拳銃やライフルで、反動はあるのだが、実際に弾丸が発砲されることはなく、銃の方向センサーに依って的への命中の判定がされ、CG画像で命中位置などが映し出されるのだ。
「味気ないと言えば味気ないが、安全面を考えると、これが一番に違いないよな……」
そう、彼が海外で修行した際、銃の練習場に、この様なシステムなどは存在せず、常に危険と隣合わせだった。暴発もそうだが、武器の略奪目的で、屡々 演習場が暴漢に狙われ、近隣で拳銃盗難に因る銃乱射事件も少なからず発生していたのだ……。
彼はそんな過去を懐かしく思い出す。大学在学中、彼は異星人警備隊に所属していた中学の先輩に憧れ、彼にでも出来る方法、銃を使うと云う手段で戦おうと、銃の撃てる国へと武者修行の旅に出た。そんな、遥かに遠くなったあの日のことを……。
風祭隊員はと云うと、机に足を掛けて座り、リボルバーの何度目かの手入れを行っている。
「今日は、お嬢様はお休みか……。じゃぁ折角の日曜日だってのに、
そう。討伐隊メンバーにも、
「おい、風祭。
小田原隊長が風祭隊員に注意をする。だが、明らかに彼も、暗に今日は
「非常勤はいいわよね……。湯本隊員、臨時でお休みにしたんでしょう?」
板橋隊員も、今日のデスクワークは何も残っていないようで、机に座った儘、ずっとネイルの手入れを行っている。
「湯本の奴、宿題が溜まっているとかって理由で休暇申請してたけど、お嬢様が休みってのを聞いて、暇なのを見越して休みを申請したに違いないぜ!」
風祭隊員が、皆に聞こえるのも構わず独り言を言った。だがそんなこと、小田原隊長も板橋隊員も、言われるまでもないことなので、別に敢えて同意の言葉を返すことなどはしなかった。
小田原隊長自身、暇を持て余している。
彼は風祭隊員に、
異星人テロリストは、大悪魔女帝との繋がりがあるらしく、基本的に
「隊長、ヌディブランコで、市内パトロールに行って来ていいですかぁ?」
「おい、勝手な行動は駄目だ。今日は特別人数が少ないんだ。それに、ヌディブランコと云う足まで奪われては、何かあった時に何も出来ないだろう!!」
「そりゃ、そうですけどね……。絶対、何も無いですよ……」
風祭隊員も、流石にその台詞を口に出すのは控えた。その代わり……。
「了解です。じゃぁ俺は、地下の射撃練習場にでも行ってますよ。万が一、異星人テロリストが暴れ出すことがあったら……、通信機か何かで、俺を呼出してください」
そう言って、風祭隊員は小田原隊長の許可の言葉もそこそこに、欠伸をしながら作戦室を出て行ってしまう。
「仕方ない奴だなぁ……。姉ちゃんに余程甘やかされてたんだろうな、あいつ」
小田原隊長は、小さく呟く。だが、それは板橋隊員には聞こえなかった様で、彼女は黙々とネイルの手入れをし続けていた。
風祭隊員は地下の射撃練習場に着くと、入口のセキュリティーロックを解除し、中へと入っていく。作戦室と同じように、同時に2人以上が入って来ないように、ここも二重ドアになっていた。
銃の所持が認められている風祭隊員でも、この施設では備え付けの銃の使用が義務付けられている。それは特殊な拳銃やライフルで、反動はあるのだが、実際に弾丸が発砲されることはなく、銃の方向センサーに依って的への命中の判定がされ、CG画像で命中位置などが映し出されるのだ。
「味気ないと言えば味気ないが、安全面を考えると、これが一番に違いないよな……」
そう、彼が海外で修行した際、銃の練習場に、この様なシステムなどは存在せず、常に危険と隣合わせだった。暴発もそうだが、武器の略奪目的で、
彼はそんな過去を懐かしく思い出す。大学在学中、彼は異星人警備隊に所属していた中学の先輩に憧れ、彼にでも出来る方法、銃を使うと云う手段で戦おうと、銃の撃てる国へと武者修行の旅に出た。そんな、遥かに遠くなったあの日のことを……。