剛霊武獣(7)
文字数 1,393文字
そう、それは『瞬間移動』であった。
寧樹は『瞬間移動』を用いて、立体駐車場の三階から二階へと移動していたのだ。尚、これは寧樹の持っている悪魔能力ではなく、呪文と呼ばれる、ある種の魔法を発動することで実現させている。
「ここはどこですの?」
「立体駐車場の二階よ。さ、変身を解くわ」
寧樹がそう言うと、サント・”アルウェン”・ネイジュの派手な衣装から、異星人討伐隊の隊服を着た、入生田萌香へと姿が変わる。そして彼女の左手首には、金色のシンプルなデザインの腕輪が、何時の間にか納まっていた。
「酷く下品な化け物でしたわね。それにしても寧樹、あなた、化け物にやられ過ぎではありませんこと?」
「ご免、ご免。確かにちょっと遊び過ぎたわ。次はもっと簡単に倒すわよ」
「ところで、お訊きしたいのですが」
「どうしても訊きたい?」
「わたくしが知りたいこと、分かってらっしゃるのね」
「ええ、勿論」
「ならば答えてください。大悪魔は憑依して剛霊武 獣を操っていると言われました。寧樹、あなたも、わたくしの体に憑依して動かしていますわよね。あなた、あなたの正体は、大悪魔なのではないですか?」
寧樹は少し間を置いた。それは、答えたくない訳ではなく、どう説明したら良いか、彼女も迷ったからだった。そして結局、寧樹は単純にそのまま伝えることにした。言い方を変えようとすると云うことは、矢張り誤魔化すことだと思ったからだ。
「そうよ、私は大悪魔。だから、今の私たちは剛霊武 獣と同じ……、大悪魔が憑依した怪物の一種なのよ」
それを聞いても、萌香は特に動揺したり、興奮する様なことはなかった。
「どうする? 不満だったら、憑依を解いても良いのよ。その時は、残念だけど、別のパートナーを探すわ……」
萌香も少し考えたのだろう。即答することは出来なかった。それでも彼女はこう答えたのである。
「あら、どうしてですの? 寧樹は仰ったじゃありません? わたくしには何もありませんのよ。寧樹がいらっしゃらないと、わたくし、お祖父様たちを守れませんわ。一緒に闘ってくださるのでは無かったのかしら?」
「え?」
「力を合わせて、サント・”アルウェン”・ネイジュをやって行きませんこと? わたくし、寧樹の仰る通り、今ノリノリですのよ」
「萌香、良いのね?」
「当り前ですわ! それより、新手がいらした様ですわ。迎撃しましょう」
二人の前方から蝙蝠人間の姿をした化け物が襲って来る。小田原隊長たちが四階に追って行った剛霊武 獣だ。それに合わせる様に、小田原隊長たちも上の階から降りて来た。
「そうね……、あれは隊長たちに任せましょうか。皆、降りてきたみたいだし」
心の中の寧樹が話し終わらない内に、風祭隊員の放った銃弾が蝙蝠剛霊武 獣の胸部に命中し、剛霊武 獣は横へと吹き飛ばされた。
「じゃ、わたくしも……」
萌香は持っていた銃を、倒された剛霊武 獣に向ける。
「入生田隊員、そこは危ない。我々に任せるのだ」
小田原隊長の言葉に驚いた萌香が、気を逸らして彼らの方に目を遣った隙をつき、剛霊武 獣が萌香に襲い掛かった。そして素早く後に回って、萌香の首に羽の着いた左手を巻いて締め上げる。萌香の銃は、敵の右手に手首を掴れて使うことが出来ない。
「フフフ、死ね、入生田萌香。貴様を殺す為に、我々は態々お前が隊に出られる日を選んで活動していたのだ!」
剛霊武 獣の締める力が更に強まった。
寧樹は『瞬間移動』を用いて、立体駐車場の三階から二階へと移動していたのだ。尚、これは寧樹の持っている悪魔能力ではなく、呪文と呼ばれる、ある種の魔法を発動することで実現させている。
「ここはどこですの?」
「立体駐車場の二階よ。さ、変身を解くわ」
寧樹がそう言うと、サント・”アルウェン”・ネイジュの派手な衣装から、異星人討伐隊の隊服を着た、入生田萌香へと姿が変わる。そして彼女の左手首には、金色のシンプルなデザインの腕輪が、何時の間にか納まっていた。
「酷く下品な化け物でしたわね。それにしても寧樹、あなた、化け物にやられ過ぎではありませんこと?」
「ご免、ご免。確かにちょっと遊び過ぎたわ。次はもっと簡単に倒すわよ」
「ところで、お訊きしたいのですが」
「どうしても訊きたい?」
「わたくしが知りたいこと、分かってらっしゃるのね」
「ええ、勿論」
「ならば答えてください。大悪魔は憑依して
寧樹は少し間を置いた。それは、答えたくない訳ではなく、どう説明したら良いか、彼女も迷ったからだった。そして結局、寧樹は単純にそのまま伝えることにした。言い方を変えようとすると云うことは、矢張り誤魔化すことだと思ったからだ。
「そうよ、私は大悪魔。だから、今の私たちは
それを聞いても、萌香は特に動揺したり、興奮する様なことはなかった。
「どうする? 不満だったら、憑依を解いても良いのよ。その時は、残念だけど、別のパートナーを探すわ……」
萌香も少し考えたのだろう。即答することは出来なかった。それでも彼女はこう答えたのである。
「あら、どうしてですの? 寧樹は仰ったじゃありません? わたくしには何もありませんのよ。寧樹がいらっしゃらないと、わたくし、お祖父様たちを守れませんわ。一緒に闘ってくださるのでは無かったのかしら?」
「え?」
「力を合わせて、サント・”アルウェン”・ネイジュをやって行きませんこと? わたくし、寧樹の仰る通り、今ノリノリですのよ」
「萌香、良いのね?」
「当り前ですわ! それより、新手がいらした様ですわ。迎撃しましょう」
二人の前方から蝙蝠人間の姿をした化け物が襲って来る。小田原隊長たちが四階に追って行った
「そうね……、あれは隊長たちに任せましょうか。皆、降りてきたみたいだし」
心の中の寧樹が話し終わらない内に、風祭隊員の放った銃弾が蝙蝠
「じゃ、わたくしも……」
萌香は持っていた銃を、倒された
「入生田隊員、そこは危ない。我々に任せるのだ」
小田原隊長の言葉に驚いた萌香が、気を逸らして彼らの方に目を遣った隙をつき、
「フフフ、死ね、入生田萌香。貴様を殺す為に、我々は態々お前が隊に出られる日を選んで活動していたのだ!」