勝利、だが……(2)
文字数 1,476文字
その時、小田原隊長が目を覚まして立ち上がった。SPA-1に憑依していた鈴木挑とアルトロが、憑依を解除して戻ってきたに違いない。
「挑さん、パパはどうしたの?」
「『レビアタンはどうなった?』とは訊かないんだな……。
レビアタンは『瞬間移送』で空中に放り上げ、『極光乱舞』と『超無窮動』の2つの呪文で瞬殺したよ。それが終った後、彼は『チョウ君が憑依を解いたら、僕は帰るよ。有希に宜しくな……』なんて言っていたから、自分の時空に帰って行ったんだと思う……。何か、彼に用事でもあったのかな?」
「いいえ、それで問題ないわ……」
そこで2人の会話は一瞬停止する。そのタイミングで、萌香が寧樹に確認してきた。
「前に寧樹が話してくれた、大悪魔女帝の強さの秘密……、勝利の信念ですとか、他人を守る為の闘いなどと言う話、あの大悪魔に話しても、絶対に納得されないと思いますわ」
「そう言うレベルじゃないのよ、彼と私たちの差は……。でも、折角だから、萌香や挑さんにも、私の家族の話を少し聴いて貰おうかな……」
ネイジュと小田原隊長の緩い会話に業を煮やしたのか、大悪魔ブラウが紳士紛いの言葉使いで文句をつけて来る。
「いい加減にして貰えませんかねぇ……。それは、少しでも生きていたいのは分かりますけどね、時間稼ぎは止めて欲しいですね」
「時間稼ぎですって? あなた、何程の者だと言うのです?! わたくしたちサント・ネイジュも、あなたと同じだけの大悪魔能力を持っていますのよ! あなたなど、簡単に蹴散らせて御覧にいれますわ!!」
萌香の言葉にも、ブラウは高笑いをするばかりで、一向に動揺する素振りを見せない。
「滑稽ですね。私には分かるのですよ。今、奪い取った大悪魔女帝の『危険察知』と言う能力でね……」
寧樹は心の中で「ふう」と息を漏らした。だが、ブラウはそんなことにも気付かず、話の先を続ける。
「サント・ネイジュなど、そこの異星人討伐隊の隊長より弱いくらいではないですか?!
私はその隊長の闘いも何度か見ているのですよ。恐らくあなたは、大悪魔女帝との戦いに疲れ、最早、力が残っていないのではないですか? 大悪魔女帝の能力を身に付けた私には、その程度の敵が何人いようと敵う筈などないではありませんか!!」
「時間稼ぎか……。そうね、時間も限られていることだし、そろそろ、あなたが弱いと云うお話を始めましょうか……」
皆にそう言って、大悪魔ブラウ、鈴木挑、そして心の中の萌香に、寧樹は彼女の家族の歴史を語りだした……。
「私のパパ、耀子叔母さん、そして私の師匠である月宮盈さんは、元々あなたと同じ様に、時空を渡り歩く大悪魔だった……。
月宮盈さん……、勿論、当時は違う名前だったのだけど、偶然ある法具造りの女性と出会い、彼女に憑依し、仲間の大悪魔と戦うことになっちゃたのよ。そこで作り方を手に入れたのが今、あなたが持っている琰と云う法具なの。
盈さんは、琰を使って次々と仲間を倒し、彼らの能力を奪っていったわ。そして最後に、彼女の親代わりの師匠から、『人間を護るんだったら、最後まで戦うんだな』と言われ、彼女は人間の守護者『耀公主』の道を歩むことになったの。
それから長い年月の後、私のパパと耀子叔母さんは、襲撃先の時空で耀公主と出逢ったわ。結局、2人は耀公主の能力に全く歯が立たず、命からがら撤退することになったのだけど、心の奥で2人も、あなたと同じ様に耀公主に憧れを持ったらしいのよ。
でもね、2人が憧れたのは、彼女の悪魔能力じゃない。勿論、叔母さんはそれにも憧れていたらしいけどね……」
「挑さん、パパはどうしたの?」
「『レビアタンはどうなった?』とは訊かないんだな……。
レビアタンは『瞬間移送』で空中に放り上げ、『極光乱舞』と『超無窮動』の2つの呪文で瞬殺したよ。それが終った後、彼は『チョウ君が憑依を解いたら、僕は帰るよ。有希に宜しくな……』なんて言っていたから、自分の時空に帰って行ったんだと思う……。何か、彼に用事でもあったのかな?」
「いいえ、それで問題ないわ……」
そこで2人の会話は一瞬停止する。そのタイミングで、萌香が寧樹に確認してきた。
「前に寧樹が話してくれた、大悪魔女帝の強さの秘密……、勝利の信念ですとか、他人を守る為の闘いなどと言う話、あの大悪魔に話しても、絶対に納得されないと思いますわ」
「そう言うレベルじゃないのよ、彼と私たちの差は……。でも、折角だから、萌香や挑さんにも、私の家族の話を少し聴いて貰おうかな……」
ネイジュと小田原隊長の緩い会話に業を煮やしたのか、大悪魔ブラウが紳士紛いの言葉使いで文句をつけて来る。
「いい加減にして貰えませんかねぇ……。それは、少しでも生きていたいのは分かりますけどね、時間稼ぎは止めて欲しいですね」
「時間稼ぎですって? あなた、何程の者だと言うのです?! わたくしたちサント・ネイジュも、あなたと同じだけの大悪魔能力を持っていますのよ! あなたなど、簡単に蹴散らせて御覧にいれますわ!!」
萌香の言葉にも、ブラウは高笑いをするばかりで、一向に動揺する素振りを見せない。
「滑稽ですね。私には分かるのですよ。今、奪い取った大悪魔女帝の『危険察知』と言う能力でね……」
寧樹は心の中で「ふう」と息を漏らした。だが、ブラウはそんなことにも気付かず、話の先を続ける。
「サント・ネイジュなど、そこの異星人討伐隊の隊長より弱いくらいではないですか?!
私はその隊長の闘いも何度か見ているのですよ。恐らくあなたは、大悪魔女帝との戦いに疲れ、最早、力が残っていないのではないですか? 大悪魔女帝の能力を身に付けた私には、その程度の敵が何人いようと敵う筈などないではありませんか!!」
「時間稼ぎか……。そうね、時間も限られていることだし、そろそろ、あなたが弱いと云うお話を始めましょうか……」
皆にそう言って、大悪魔ブラウ、鈴木挑、そして心の中の萌香に、寧樹は彼女の家族の歴史を語りだした……。
「私のパパ、耀子叔母さん、そして私の師匠である月宮盈さんは、元々あなたと同じ様に、時空を渡り歩く大悪魔だった……。
月宮盈さん……、勿論、当時は違う名前だったのだけど、偶然ある法具造りの女性と出会い、彼女に憑依し、仲間の大悪魔と戦うことになっちゃたのよ。そこで作り方を手に入れたのが今、あなたが持っている琰と云う法具なの。
盈さんは、琰を使って次々と仲間を倒し、彼らの能力を奪っていったわ。そして最後に、彼女の親代わりの師匠から、『人間を護るんだったら、最後まで戦うんだな』と言われ、彼女は人間の守護者『耀公主』の道を歩むことになったの。
それから長い年月の後、私のパパと耀子叔母さんは、襲撃先の時空で耀公主と出逢ったわ。結局、2人は耀公主の能力に全く歯が立たず、命からがら撤退することになったのだけど、心の奥で2人も、あなたと同じ様に耀公主に憧れを持ったらしいのよ。
でもね、2人が憧れたのは、彼女の悪魔能力じゃない。勿論、叔母さんはそれにも憧れていたらしいけどね……」