わたくし、やります(7)
文字数 1,382文字
萌香は左手首を叩いて金の腕輪を出した。
「寧樹、今は片平さんたちがいるから、ここでは変身が出来ないわ。何とかならない?」
だが、それに対する返事は返って来ない。替わりにそれに答えたのは、キャットスーツの女の方であった。
「ご免なさいね。彼女は私が魔法で眠らせちゃったから、今はちょっと、あなたとお話が出来ないのよ……」
宮城野が、この怪しい女に闘いを挑もうと向かって行く。だが、それは女が掌を彼に向けただけで、その場に足止めを食らわされてしまった。
「あなた、何者なの! 警察を呼びますよ」
乙女が気丈にも、キャットスーツの女に食って掛かる。だが、女は薄ら笑いを浮かべただけで、一向に怯む様子はない。
「私は人間じゃないの。今は大悪魔女帝と呼ばれているわね。ちょっと萌香ちゃんに用事があって、一緒に来て貰いたいのよ」
「入生田さん、こんな奴らについて行く必要なんかないわ。早く逃げて!」
「あら、逃げちゃって良いのかしら? 萌香ちゃん、あなたが逃げたら、私、この二人に何をするか、分からないわよ……」
萌香は膝の震えが止まらず、今にも腰を抜かしそうだった。だが、それでも彼女は、裏返った声ではあったが言葉を返している。
「私が一緒に行けば……、二人には手を出さないって、約束してくれるのですか?」
「勿論よ。だって、二人に用事なんて何も無いもの。私が拉致したいのは、入生田重国氏のお孫さんだけよ」
「分かったわ……」
それを聞いた乙女が、萌香に翻意を促す。
「そんなの嘘に決まってる! 信じちゃ駄目よ、入生田さん」
マンモスの様なマスクの男と、コンドルのマスクの男が乙女に襲いかかろうと、闇の中から飛び出してくる。剛霊武 獣だ。だが、乙女には、覆面で顔を隠した曲者にしか見えはしない。
その二人が大悪魔女帝と名乗る女の前に出ようとするのを、女は手を広げて遮った。
「萌香ちゃん、決断しなさい。私だって、いつまでも、こいつらを押さえて置くことなんて出来ないのよ」
この隙を衝いて、動けるようになっていた宮城野が、どこから持って来たのか木の杭の様な物で女の頭を思いっきり殴りつける。だが、そんな必死の攻撃も、女に全くダメージを与えることも出来ず、ただ宮城野の両手に痺れを残すだけの結果にしかならなかった。
女は「五月蝿いなぁ」と言った表情で宮城野に流し目を寄こし、軽く右の廻し蹴りを彼のボディに叩き込む。宮城野は、もうそれで腹を押さえて蹲ることしか出来なくなった。
「止めて! 二人には関係無いことでしょ」
「じゃ、言うことを聞くのね」
女の言葉に萌香は小さく頷いた。
キャットスーツの女が、コンドルの剛霊武 獣に目配せすると、剛霊武 獣は萌香に近づいて彼女を肩に担ぎ上げる。萌香は特にそれに抵抗せずされるがままにしていた。そして、剛霊武獣は萌香を担ぎ上げ、宙へと舞い上がって行ったのである。
「さ、約束よ。二人はここで解放してあげるわね。宮城野さんって仰ったかしら? このお嬢さんをお家まで送ってあげて頂戴ね」
そして、マンモスの剛霊武 獣に、顎と言葉で引き上げる様に指図する。
「さ、私たちも行くわよ」
「お、お前たちは何処へ行く心算なんだ?」
腹を押さえて、まだ話すのも苦しそうな宮城野が何とかそれを尋ねた。
「勿論、処刑場よ。萌香ちゃんのね。入生田萌香の処刑には、私たちも是非立ち合わなくっちゃあね」
「寧樹、今は片平さんたちがいるから、ここでは変身が出来ないわ。何とかならない?」
だが、それに対する返事は返って来ない。替わりにそれに答えたのは、キャットスーツの女の方であった。
「ご免なさいね。彼女は私が魔法で眠らせちゃったから、今はちょっと、あなたとお話が出来ないのよ……」
宮城野が、この怪しい女に闘いを挑もうと向かって行く。だが、それは女が掌を彼に向けただけで、その場に足止めを食らわされてしまった。
「あなた、何者なの! 警察を呼びますよ」
乙女が気丈にも、キャットスーツの女に食って掛かる。だが、女は薄ら笑いを浮かべただけで、一向に怯む様子はない。
「私は人間じゃないの。今は大悪魔女帝と呼ばれているわね。ちょっと萌香ちゃんに用事があって、一緒に来て貰いたいのよ」
「入生田さん、こんな奴らについて行く必要なんかないわ。早く逃げて!」
「あら、逃げちゃって良いのかしら? 萌香ちゃん、あなたが逃げたら、私、この二人に何をするか、分からないわよ……」
萌香は膝の震えが止まらず、今にも腰を抜かしそうだった。だが、それでも彼女は、裏返った声ではあったが言葉を返している。
「私が一緒に行けば……、二人には手を出さないって、約束してくれるのですか?」
「勿論よ。だって、二人に用事なんて何も無いもの。私が拉致したいのは、入生田重国氏のお孫さんだけよ」
「分かったわ……」
それを聞いた乙女が、萌香に翻意を促す。
「そんなの嘘に決まってる! 信じちゃ駄目よ、入生田さん」
マンモスの様なマスクの男と、コンドルのマスクの男が乙女に襲いかかろうと、闇の中から飛び出してくる。
その二人が大悪魔女帝と名乗る女の前に出ようとするのを、女は手を広げて遮った。
「萌香ちゃん、決断しなさい。私だって、いつまでも、こいつらを押さえて置くことなんて出来ないのよ」
この隙を衝いて、動けるようになっていた宮城野が、どこから持って来たのか木の杭の様な物で女の頭を思いっきり殴りつける。だが、そんな必死の攻撃も、女に全くダメージを与えることも出来ず、ただ宮城野の両手に痺れを残すだけの結果にしかならなかった。
女は「五月蝿いなぁ」と言った表情で宮城野に流し目を寄こし、軽く右の廻し蹴りを彼のボディに叩き込む。宮城野は、もうそれで腹を押さえて蹲ることしか出来なくなった。
「止めて! 二人には関係無いことでしょ」
「じゃ、言うことを聞くのね」
女の言葉に萌香は小さく頷いた。
キャットスーツの女が、コンドルの
「さ、約束よ。二人はここで解放してあげるわね。宮城野さんって仰ったかしら? このお嬢さんをお家まで送ってあげて頂戴ね」
そして、マンモスの
「さ、私たちも行くわよ」
「お、お前たちは何処へ行く心算なんだ?」
腹を押さえて、まだ話すのも苦しそうな宮城野が何とかそれを尋ねた。
「勿論、処刑場よ。萌香ちゃんのね。入生田萌香の処刑には、私たちも是非立ち合わなくっちゃあね」