召喚されしもの(2)
文字数 1,481文字
戦いを始める前、大悪魔女帝はネイジュに1つの提案をしてきた。
「ねぇ有希ちゃん、新たなルールを追加したいんだけど……」
「もう……、何? 1対1で戦おうって言うの? 別に構わないけど……、それならそうと、最初からそう言っておいてよね! 隊長だって、知っていたら来なかった……」
「チョウ君が手伝っても問題ないわよ。私だって、ブラウや剛霊武獣を呼べるんだもの。フィフティフィフティよ」
「じゃぁ何?」
「私たちって、瞬間移動で逃げ出せるでしょう? それ、無しにしたいのよ。つまり、この部屋から先に出たら試合放棄で負けってルールを追加したいの。だって、ヒットアンドアウェイでやられたら、何時まで経っても終わらないでしょう?」
それには萌香が不満をぶつける。
「そんなの、わたくしたちの勝手ではございませんこと? わたくしたち、何度でもチャレンジして、最後には、必ず勝たせて頂きますわ!」
「それは困るわね……。だったら、私も異星人討伐隊の作戦室を襲おうかしら? 2度も3度も戦おうって気にならないように……」
そう言われてしまうと、結局、萌香も妥協するしかなく、寧樹もそれに同意する。
「分かったわ。ここで決着を付けて、作戦室に攻め込むチャンスなど与えなければいいんでしょう? それに……、こっちも、勝ったと思った時に、叔母さんに逃げられたら口惜しいもん」
そうなのだ。『瞬間移動』を許してしまっては、無限に戦わなければならなくなる。失敗した時、再チャレンジをする機会が無くなるのは困るが、決着が付かない状態が続くのも困ってしまう。それでは、何も進展していないのと変わりがない。剛霊武獣は人間を襲い続けるだろうし、それに対する人間の怒りは、異星人に向けられ、じわじわと蓄積続けていくのだ。
決着はこの1回で付けなければならない。
「じゃぁ始めましょうか?」
大悪魔女帝は両手で拳を造り、右拳を胸の前に、左拳をネイジュ寄りに置き、右半身を取る。それに対し寧樹と萌香は、心の中で作戦を検討し直していた。
「寧樹、どうやって戦いますの? 格闘じゃ不利なのでしょう?」
「通用するのは魔法しかないだろうけど、ちょっと変なのよね……」
「何が?」
「叔母さんだって、私の魔法の恐ろしさを知っている筈。なのに……、なんで、叔母さんは、私の魔法を封じて来ないのだろう?」
勿論、その会話は、大悪魔女帝にも筒抜けになっていた。
「有希ちゃん、教えてあげるから、魔法を使って来なさいよ」
「言われた通り、試すしかないか……」
サント・ネイジュは、大悪魔女帝に魔法攻撃を敢行する。
「光背光矢!」
ネイジュの背中に後光が差した。
『魔法の矢(マジックミサイル)』と言う基本攻撃魔法がある。魔法の盾などの魔法防御が無ければ、必ず命中する光の矢の攻撃だ。通常、魔法力が上がる度に発射できる矢の本数は増加していく。
『光背光矢』とは、その『魔法の矢』のバージョンアップ版である。無数の光の矢を発生させ、それを一斉に発射して一気に敵を撃つのだ。
その光の矢を発射する前、背中に現れた光の矢の輝きが後光に見えることから、彼らはこの魔法を『光背光矢』と呼んでいた。
直後、光の輝きが爆発し、1本1本の細い光の線が一旦広がった後に放物線を描いて全て大悪魔女帝目掛けて飛んで行く。流石の彼女も、これだけのマジックミサイルが命中したのであれば無傷ではいられまい。
萌香はそう考えたのだが、光の矢は大悪魔女帝に触れた瞬間に消失していく。だが、それは『魔法の盾』ではない。明らかに別の防御呪文であった。
「『攻撃魔法避け』……ね」
寧樹が呟く。
「ねぇ有希ちゃん、新たなルールを追加したいんだけど……」
「もう……、何? 1対1で戦おうって言うの? 別に構わないけど……、それならそうと、最初からそう言っておいてよね! 隊長だって、知っていたら来なかった……」
「チョウ君が手伝っても問題ないわよ。私だって、ブラウや剛霊武獣を呼べるんだもの。フィフティフィフティよ」
「じゃぁ何?」
「私たちって、瞬間移動で逃げ出せるでしょう? それ、無しにしたいのよ。つまり、この部屋から先に出たら試合放棄で負けってルールを追加したいの。だって、ヒットアンドアウェイでやられたら、何時まで経っても終わらないでしょう?」
それには萌香が不満をぶつける。
「そんなの、わたくしたちの勝手ではございませんこと? わたくしたち、何度でもチャレンジして、最後には、必ず勝たせて頂きますわ!」
「それは困るわね……。だったら、私も異星人討伐隊の作戦室を襲おうかしら? 2度も3度も戦おうって気にならないように……」
そう言われてしまうと、結局、萌香も妥協するしかなく、寧樹もそれに同意する。
「分かったわ。ここで決着を付けて、作戦室に攻め込むチャンスなど与えなければいいんでしょう? それに……、こっちも、勝ったと思った時に、叔母さんに逃げられたら口惜しいもん」
そうなのだ。『瞬間移動』を許してしまっては、無限に戦わなければならなくなる。失敗した時、再チャレンジをする機会が無くなるのは困るが、決着が付かない状態が続くのも困ってしまう。それでは、何も進展していないのと変わりがない。剛霊武獣は人間を襲い続けるだろうし、それに対する人間の怒りは、異星人に向けられ、じわじわと蓄積続けていくのだ。
決着はこの1回で付けなければならない。
「じゃぁ始めましょうか?」
大悪魔女帝は両手で拳を造り、右拳を胸の前に、左拳をネイジュ寄りに置き、右半身を取る。それに対し寧樹と萌香は、心の中で作戦を検討し直していた。
「寧樹、どうやって戦いますの? 格闘じゃ不利なのでしょう?」
「通用するのは魔法しかないだろうけど、ちょっと変なのよね……」
「何が?」
「叔母さんだって、私の魔法の恐ろしさを知っている筈。なのに……、なんで、叔母さんは、私の魔法を封じて来ないのだろう?」
勿論、その会話は、大悪魔女帝にも筒抜けになっていた。
「有希ちゃん、教えてあげるから、魔法を使って来なさいよ」
「言われた通り、試すしかないか……」
サント・ネイジュは、大悪魔女帝に魔法攻撃を敢行する。
「光背光矢!」
ネイジュの背中に後光が差した。
『魔法の矢(マジックミサイル)』と言う基本攻撃魔法がある。魔法の盾などの魔法防御が無ければ、必ず命中する光の矢の攻撃だ。通常、魔法力が上がる度に発射できる矢の本数は増加していく。
『光背光矢』とは、その『魔法の矢』のバージョンアップ版である。無数の光の矢を発生させ、それを一斉に発射して一気に敵を撃つのだ。
その光の矢を発射する前、背中に現れた光の矢の輝きが後光に見えることから、彼らはこの魔法を『光背光矢』と呼んでいた。
直後、光の輝きが爆発し、1本1本の細い光の線が一旦広がった後に放物線を描いて全て大悪魔女帝目掛けて飛んで行く。流石の彼女も、これだけのマジックミサイルが命中したのであれば無傷ではいられまい。
萌香はそう考えたのだが、光の矢は大悪魔女帝に触れた瞬間に消失していく。だが、それは『魔法の盾』ではない。明らかに別の防御呪文であった。
「『攻撃魔法避け』……ね」
寧樹が呟く。