入生田萌香(8)

文字数 1,042文字

 次の日曜日、入生田萌香は現役学生でありながらスーツに身を包み、家族に内緒で一人、就職フェアが開かれているメッセ会場へと足を運んでいる。勿論、就職先は何処でも良いと云う訳ではない。
 対異星人防衛省とも云うべき宇宙軍のブースに訪れた萌香は、自分の名前と住所、メールアドレス等を記入する……。受付け嬢は、萌香が入生田重国氏の孫娘だと云うことに、少しも気付いてはいない様であった。
「お越しいただき、ありがとうございます。丁度、今、異星人討伐隊の緊急募集を行っている最中なんですよ」
「わたくし、まだ、現役の高校生なのですけど、それですと何か問題ございますか?」
「いいえ、その旨を事前にご連絡して頂ければ、準隊員としてご登録頂き、緊急時に臨時職員として作業して頂くことも可能です。職務上、人手が足らなくなったからと云って、直ぐ様『学生アルバイトを』って訳にはいきませんので……」
 萌香は「成程」と思う。
「で、入生田さんは、格闘技のご経験とかはお有りですか?」
「総合格闘術を少々。異星人と素手で戦っても負けない自信があります」
 答えに詰まった萌香に替わり、これには寧樹が咄嗟に答えた。
「入隊選抜試験の試験時刻等は、追ってメールでご連絡致します。尚、選抜試験には、実技もございますので、当日は道着のご用意をお願いします」
 その日の面接はそれまでであった。

「寧樹、試験があるって言われましたけど、わたくしたち、大丈夫でしょうか?」
「全力を尽くすだけよ。それより萌香、仕事に就くと、高校生活の時間が減っちゃうけど、辛くない?」
「今更、おべっかを使うだけの友だちなんか必要ありませんし、学校生活なんかにも興味ありませんわ。そんなの、分かっていらっしゃるでしょう?」
「それは、萌香の自業自得ってものよ……。どうせ、あなたに直言する子は全部遠ざけて、おべっか使う子ばっかりを周りに侍らせてたんでしょう?」
「それは、そうかも知れませんけど……」
「ま、そう言っても仕方ないかな。入生田重国の孫娘でもなければ、おべっかなんか使われることもないし、萌香じゃなくても、誰だって褒められたら嬉しいもんね」
「分かって下さるのね。ありがとう、寧樹」
「それにしても、その人を小馬鹿にしたような喋り方、何とかならないの?」
「小馬鹿になんて、そんなことありませんわ。でも、お気に召さないのであれば、寧樹が話している話し方にするように、一応努力をしてみますわ……」
「頼むわね!」
 二人の一人は、笑い合いながら家路へと向かっていった。
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登場人物紹介

入生田萌香


この物語の主人公。ゴーラ女学院付属女子高の二年生。祖父は、異星人排斥論者で知られる政界の大立者、入生田重国。気位の高いお嬢様と思われているが、実は気が弱く自分に自身を持てない少女。寧樹という謎の女性に助けられ、彼女が憑依することを許可する。そして、寧樹から入生田家の未来を見せられ、それを阻止すべく異星人討伐隊の一員(非常勤隊員)となる。

寧樹


萌香に憑依した謎の女性。腕輪を外すことで、全ての悪魔能力を解放でき、その擬態能力で「サント・ネイジュ」に変身する。従姉妹のサーラに頼まれ、この時空を救う為にやって来た。

小田原平蔵


異星人討伐隊隊長。人間ながら超人的な筋力と体力を持っている。

風祭隼


異星人討伐隊隊員。射撃を得意としている。

板橋羽根子


異星人討伐隊隊員。データや暗号解析のスペシャリスト。実戦はあまり得意ではない。

湯本譲治


異星人討伐隊隊員(非常勤隊員)。専門は作戦の立案。戦闘では日本刀を使う。

大悪魔女帝


剛霊武獣を操り、社会を混乱に陥れようとしている大悪魔軍団のリーダー。マスクとキャットスーツに身を包んだお喋りで小物感あふれる女性。寧樹と同様に大悪魔能力と魔法を自在に操ることが出来る。

ブラウ


大悪魔女帝に仕える大悪魔。『三つの質問』なる大悪魔能力を持ち、サント・ネイジュの謎に迫る。

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