剛霊武獣(6)
文字数 1,417文字
「ま、これが、三流悪魔の、三流悪魔たる所以 ってとこね」
寧樹は涼しい顔でそう言うと、蜥蜴剛霊武 獣の右の手首を掴み、彼女の顔の上から引き剥がす。
「貴様ァ!」
掴まれた右手を振り払って、続けざまの剛霊武 獣のパンチ。
だが、寧樹も飽きたのか、もうそれを顔面で受けようとはしない。その右の拳を寧樹は右の掌で受け止めた。
「じゃ、今度はこっちから行くわね」
そうしておいて、寧樹は左の拳を蜥蜴剛霊武 獣の腹部にぶち込んだ。そのアッパーぎみの一撃は、剛霊武 獣の体を軽々と浮き上がらせている。
寧樹は、腹を押さえて蹲る剛霊武 獣の目の前で、見下す様に仁王立ちになった。
「もう良い加減で諦めて、憑依を解いて逃げたら? 人間以下の戦闘力しかない、
それを聞いた蜥蜴剛霊武 獣は、怒りに任せて今一度、鉄の塊と化した右の拳を寧樹に向かって放つ。だが、それは寧樹にとって、あまりに遅く、軽く、脆い。
寧樹は一旦後ろに下がって充分な間合いを取り、相手の攻撃に合わせる距離まで踏み込んで、拳に拳を合わせて迎え撃つ。寧樹には敵がパンチを放つ間にそれだけのことをする余裕があった。そして彼女の拳は、その接触する瞬間に 信じられない程固く、そして重くなっていたのだ。その上、剛霊武 獣は気付いていなかった様だが、先程寧樹に掴れた右手は、既に零下百二十度まで冷やされ、極度に弾性を失っていたのである。
その結果……、氷細工と化した彼の鉄の拳は、寧樹の拳との衝突の衝撃に耐えきれず、瀬戸物の様に粉々に砕け散った。
剛霊武 獣は驚きと苦痛に膝をつき、拳を失った右手の手首をもう一方の手で掴んで掲げ痛みに堪える。だが、彼にはそうやっている余裕などありはしない。
蜥蜴剛霊武 獣の顔面には、寧樹の必殺の右の拳が直撃する。それは、高速で向かってくる鋼鉄の塊りに他ならなかった。その一撃で蜥蜴剛霊武 獣の首から上は、千切れる様に軽く吹き飛んだ。
「私の師匠の必殺パンチよ。お味はどうだったかしら?」
そう嘯く寧樹であったが、彼女の背中にキャップ付き徹甲弾が命中する。発射したのは風祭隊員だ。
「この化け物め! 入生田隊員を何処へやった?!」
「後から撃つなんて、卑怯じゃない?」
寧樹の抗議を無視して、小田原隊長の無言の跳び蹴りが彼女を襲う。寧樹はそれを左にステップして避けた。
そのまま連続して、小田原隊長の左右の廻し蹴り。これを寧樹は下がりながら、左右の手を使ってガードする。
「中々やるな。ならば、これでどうだ?」
そう言って、小田原隊長は高速の左ストレートを繰り出す。これを思わず寧樹は右の頬に喰ってしまい、二メートルほど吹き飛んで倒された。
「参ったなぁ……。結構威力あるのね。次は避けることにしよっと」
そう言って寧樹は立ち上がる。そこに小田原隊長が再び質問をした。
「貴様は、いったい何者だ! 入生田隊員を何処にやった!」
「名前は……、えーっと、確か、サント・アルウェン・ネイジュ……だったと思う」
「だったと思う?」
その風祭隊員の声は無視する。
「入生田萌香って女の子の隊員だったら、下の階に逃げたわよ。じゃ、私はこれで」
「あ、ま、待て!」
寧樹はそう言うと、そのまま煙の様に姿を消した。
流石に、異星人テロリストや剛霊武 獣を見慣れている風祭、湯本両隊員も、これには唖然として声も出ない。ただ、小田原隊長だけは、驚きながらも、小さくこう呟いていたのである。
「『瞬間移動』……か」
寧樹は涼しい顔でそう言うと、蜥蜴
「貴様ァ!」
掴まれた右手を振り払って、続けざまの
だが、寧樹も飽きたのか、もうそれを顔面で受けようとはしない。その右の拳を寧樹は右の掌で受け止めた。
「じゃ、今度はこっちから行くわね」
そうしておいて、寧樹は左の拳を蜥蜴
寧樹は、腹を押さえて蹲る
「もう良い加減で諦めて、憑依を解いて逃げたら? 人間以下の戦闘力しかない、
最弱の大悪魔
さん」それを聞いた蜥蜴
寧樹は一旦後ろに下がって充分な間合いを取り、相手の攻撃に合わせる距離まで踏み込んで、拳に拳を合わせて迎え撃つ。寧樹には敵がパンチを放つ間にそれだけのことをする余裕があった。そして彼女の拳は、その接触する瞬間に 信じられない程固く、そして重くなっていたのだ。その上、
その結果……、氷細工と化した彼の鉄の拳は、寧樹の拳との衝突の衝撃に耐えきれず、瀬戸物の様に粉々に砕け散った。
蜥蜴
「私の師匠の必殺パンチよ。お味はどうだったかしら?」
そう嘯く寧樹であったが、彼女の背中にキャップ付き徹甲弾が命中する。発射したのは風祭隊員だ。
「この化け物め! 入生田隊員を何処へやった?!」
「後から撃つなんて、卑怯じゃない?」
寧樹の抗議を無視して、小田原隊長の無言の跳び蹴りが彼女を襲う。寧樹はそれを左にステップして避けた。
そのまま連続して、小田原隊長の左右の廻し蹴り。これを寧樹は下がりながら、左右の手を使ってガードする。
「中々やるな。ならば、これでどうだ?」
そう言って、小田原隊長は高速の左ストレートを繰り出す。これを思わず寧樹は右の頬に喰ってしまい、二メートルほど吹き飛んで倒された。
「参ったなぁ……。結構威力あるのね。次は避けることにしよっと」
そう言って寧樹は立ち上がる。そこに小田原隊長が再び質問をした。
「貴様は、いったい何者だ! 入生田隊員を何処にやった!」
「名前は……、えーっと、確か、サント・アルウェン・ネイジュ……だったと思う」
「だったと思う?」
その風祭隊員の声は無視する。
「入生田萌香って女の子の隊員だったら、下の階に逃げたわよ。じゃ、私はこれで」
「あ、ま、待て!」
寧樹はそう言うと、そのまま煙の様に姿を消した。
流石に、異星人テロリストや
「『瞬間移動』……か」