入生田萌香(2)
文字数 1,252文字
入生田重国……。
彼は政界の長老であると同時に、右翼の大立者であり、異星人排斥運動の中心的存在でもあった。
彼の提唱する異星人排斥運動とは、地球に多く隠れ住む異星人を全て捕え、出身星の送り帰すと云うものであり、それに同意しない異星人は、駆除も辞さないと云う強硬な反異星人思想である。
確かに、これまで異星人による住民トラブルは枚挙に遑 が無く、彼の提唱する以前から異星人排斥論は存在していた。同時にまた、在来種である人類による、非公式な異星人への迫害行為も至る所で行われて続けている。
だが、入生田重国の様な、影響力のある立場の人物の意見ともなると、単に個人の意見などではなく、国家の判断となってしまう可能性がある。そして、国家の判断と云うことになると、国家レベルでの虐殺 が行われると云うことでもあるのだ。
「侵略的外来種は根絶やしに駆除せねば、この星の在来種の生活域が浸食される。確かに外来種だけが悪い訳ではない。それを持ち込むことに、何の問題も感じていなかった在来人類にも責任はある。しかし、地球の生態系を守るためには、外来種駆除は必須な行為なのだ。
故に異星人諸子にも理解頂き、地球からの自主的な退去をお願いしたい。さもなくば、我々人類は、異星人抹殺を実行せざる得ないのである」
この入生田重国の異星人排斥論は、一部人権派の反対意見はあったものの、基本的に在来人類には大いなる賛同で迎えられた。それ程、多くの在来人類は異星人に対する不満に満ち溢れていたのである。
だが当然、異星人の中には、彼の存在を疎ましく思っている者も少なくはなかった。恐らく黒服の連中も、その様な異星人集団であったのだろう。
「た、助けなさい……」
萌香は黒服の連中に頼んだ。だが、黒服の男は何も答えようとはせず、少女の襟首を捕まえに掛かる。
萌香の助けの求めに応じたのは、陰から現れた新しい人物であった。その人物は言葉は発せず、手を伸ばした黒服のその手首を掴んでいた。
「すみませんけど……、私、彼女に用があるので……」
「巫山戯るな!」
「ふざけてませんよ! 私、寧樹 って言うんですけどね、ちょっと彼女をお借りしたいと思ってるんです」
黒服の男の手首を掴んだのは、萌香より少し年齢が上くらいの女性。だが、決して彼女は並みの女性ではなかった。
彼女の手を振り払った男は、拳銃を構え、銃口を彼女に向けようとする。だが、銃を持った彼の手首は、その前に思いっきり蹴り上げられ、彼女へと銃を向けることが出来ない。
他の黒服も一気に寧樹と云う女性に襲いかかった。だが、寧樹と云う女性は黒服よりも遥かに強い。寧樹は殺陣でも演じる様に次々に黒服たちを倒していく。
だが、それでも数は黒服が多い。少し離れた場所にいた黒服が、狙いを定めて寧樹に発砲した。鈍く響く銃声……。
「もう。痛ったいなぁ~」
鈍い音と共に発射された弾丸は、寧樹の後頭部に当たり力なく落下した。見ると弾丸は、何か固い壁にでもぶつかったかの様に、先端部がひしゃげて潰れていたのである。
彼は政界の長老であると同時に、右翼の大立者であり、異星人排斥運動の中心的存在でもあった。
彼の提唱する異星人排斥運動とは、地球に多く隠れ住む異星人を全て捕え、出身星の送り帰すと云うものであり、それに同意しない異星人は、駆除も辞さないと云う強硬な反異星人思想である。
確かに、これまで異星人による住民トラブルは枚挙に
だが、入生田重国の様な、影響力のある立場の人物の意見ともなると、単に個人の意見などではなく、国家の判断となってしまう可能性がある。そして、国家の判断と云うことになると、国家レベルでの
「侵略的外来種は根絶やしに駆除せねば、この星の在来種の生活域が浸食される。確かに外来種だけが悪い訳ではない。それを持ち込むことに、何の問題も感じていなかった在来人類にも責任はある。しかし、地球の生態系を守るためには、外来種駆除は必須な行為なのだ。
故に異星人諸子にも理解頂き、地球からの自主的な退去をお願いしたい。さもなくば、我々人類は、異星人抹殺を実行せざる得ないのである」
この入生田重国の異星人排斥論は、一部人権派の反対意見はあったものの、基本的に在来人類には大いなる賛同で迎えられた。それ程、多くの在来人類は異星人に対する不満に満ち溢れていたのである。
だが当然、異星人の中には、彼の存在を疎ましく思っている者も少なくはなかった。恐らく黒服の連中も、その様な異星人集団であったのだろう。
「た、助けなさい……」
萌香は黒服の連中に頼んだ。だが、黒服の男は何も答えようとはせず、少女の襟首を捕まえに掛かる。
萌香の助けの求めに応じたのは、陰から現れた新しい人物であった。その人物は言葉は発せず、手を伸ばした黒服のその手首を掴んでいた。
「すみませんけど……、私、彼女に用があるので……」
「巫山戯るな!」
「ふざけてませんよ! 私、
黒服の男の手首を掴んだのは、萌香より少し年齢が上くらいの女性。だが、決して彼女は並みの女性ではなかった。
彼女の手を振り払った男は、拳銃を構え、銃口を彼女に向けようとする。だが、銃を持った彼の手首は、その前に思いっきり蹴り上げられ、彼女へと銃を向けることが出来ない。
他の黒服も一気に寧樹と云う女性に襲いかかった。だが、寧樹と云う女性は黒服よりも遥かに強い。寧樹は殺陣でも演じる様に次々に黒服たちを倒していく。
だが、それでも数は黒服が多い。少し離れた場所にいた黒服が、狙いを定めて寧樹に発砲した。鈍く響く銃声……。
「もう。痛ったいなぁ~」
鈍い音と共に発射された弾丸は、寧樹の後頭部に当たり力なく落下した。見ると弾丸は、何か固い壁にでもぶつかったかの様に、先端部がひしゃげて潰れていたのである。