勝利、だが……(1)
文字数 1,591文字
「私の勝ちよ、耀子叔母さん……」
大悪魔女帝は崩れ落ち、ガクッと膝をついた。ミスリルウォーリアーを身に纏った萌香……、いや、寧樹の一撃が、大悪魔女帝の左胸を一気に貫いたのである。
「寧樹! これで金丹を飲ませれば、お終いですわ!!」
萌香は心の中で叫んでいた。
心臓を貫かれた大悪魔女帝は、両膝を突いたまま、声を出すことも出来ず、呻いている。もう彼女に抗う術はない。サント・ネイジュの勝利だ!
隣の部屋のモニタからでも見ていたのだろうか? リビングから入って来るなり、大悪魔女帝の副官である燕尾服の大悪魔、ブラウが彼女の元に駆け寄った。
「エンプレス!!」
ブラウは蹲 る彼女の前に周り、彼女の両肩に手を掛け、意識を取り戻させる為か身体を前後に揺さ振った。しかし、大悪魔女帝は意識を取り戻すこともなく、彼の動作に合わせてゲル状の物体の様に、ただ、力なく揺さ振られるだけであった。
「さぁ、退いて……。流石の耀子叔母さんだとしても、もう、どうすることも出来はしないでしょうからね……」
「そうです。早く金丹を飲ませないと、本当に亡くなられてしまうかも知れませんわ。あなたも、彼女を助けたいでしょう?」
寧樹に続き、萌香がそう言った直後である。彼女を抱き起していたブラウが、意外な行動に出たのは……。
彼は懐に手を入れ、その中に隠されていた悍ましい雰囲気の水晶玉を取り出し、大悪魔女帝の額に宛がったのだ。そして、それと同時に、水晶玉と大悪魔女帝の身体全体が、眩い光に包まれていく……。
それを見た寧樹は、自分で自分自身に『魔法封じ』の呪文を掛けた。これで彼女自身は暫くの間、魔法を使うことが出来なくなる。
大悪魔女帝を包んでいた光は、次第に輝きを鈍らせ、いつしか失せていった。
その輝きを放っていた跡には、干からびた赤茶けたミイラの様な大悪魔女帝の姿があった。そして、そのミイラも、数秒後には、白い霧となって消え失せていく……。
「フフフ、ハハハハハハ」
「何が可笑しいんですの? あなた、寧樹の叔母さんに何を為さったの?!」
萌香がブラウに訊ねる。だが、ブラウは余程可笑しかったのか、直ぐには答えず、暫く経った後にやっと返事を返した。
「馬鹿な女だ。私はずっと、これを狙っていたのだと云うのに……」
「え?!」
「大悪魔皇帝が倒され、皇帝軍がこの女に因って壊滅させられた時、私は思ったのだ。『あの力があれば、私が皇帝の座に就けたものを……』とな。そのチャンスは数年後に訪れた。あの女は大悪魔の残骸を処理する為に、宇宙を掃除しておったのだ。私は奴を口先で騙し、大悪魔の窮状を訴えた。そして奴を大悪魔女帝に仕立て、このチャンスを、ずっと待っていたのだ!! これで私は、最強の大悪魔となったのだ!!」
寧樹は、そんな大悪魔を見て、寂しそうに、小さく呟いていた。
「残念ね……、耀子叔母さん……」
「あの女も哀れなもんだ……」
「哀れね……」
「精々、憐れんでやるんだな!」
「あなた……、何も分かっていない……」
「ん??」
「耀子叔母さんは、あなたの野望など、最初に会った時から分かっていた。それでも、あなたが改心してくれると思って黙っていたのよ。嘘じゃないわ。叔母さんは相手の心が読めるもの。あなたの陰謀に、耀子叔母さんが気付かない訳、ないじゃない」
「フフフ。もし、そうだと言うなら、あの女はよっぽどの間抜けだな。大悪魔女帝などと煽てられ、結局、私の踏み台として利用されてしまったのだからな」
寧樹はふうと息を吐いた。
「ハッキリ言って、耀子叔母さんの悪魔能力なんかを奪ったところで、それじゃ、大して強くなれはしないのよ」
「馬鹿を言うな!」
「それに、真の強さは力だけじゃ無い!」
「他に何があると言うのだ?!」
「そうね、時間も少しあることだし、折角だから、私の家族の歴史について、掻い摘んでお話しでもしてあげましょうか……」
大悪魔女帝は崩れ落ち、ガクッと膝をついた。ミスリルウォーリアーを身に纏った萌香……、いや、寧樹の一撃が、大悪魔女帝の左胸を一気に貫いたのである。
「寧樹! これで金丹を飲ませれば、お終いですわ!!」
萌香は心の中で叫んでいた。
心臓を貫かれた大悪魔女帝は、両膝を突いたまま、声を出すことも出来ず、呻いている。もう彼女に抗う術はない。サント・ネイジュの勝利だ!
隣の部屋のモニタからでも見ていたのだろうか? リビングから入って来るなり、大悪魔女帝の副官である燕尾服の大悪魔、ブラウが彼女の元に駆け寄った。
「エンプレス!!」
ブラウは
「さぁ、退いて……。流石の耀子叔母さんだとしても、もう、どうすることも出来はしないでしょうからね……」
「そうです。早く金丹を飲ませないと、本当に亡くなられてしまうかも知れませんわ。あなたも、彼女を助けたいでしょう?」
寧樹に続き、萌香がそう言った直後である。彼女を抱き起していたブラウが、意外な行動に出たのは……。
彼は懐に手を入れ、その中に隠されていた悍ましい雰囲気の水晶玉を取り出し、大悪魔女帝の額に宛がったのだ。そして、それと同時に、水晶玉と大悪魔女帝の身体全体が、眩い光に包まれていく……。
それを見た寧樹は、自分で自分自身に『魔法封じ』の呪文を掛けた。これで彼女自身は暫くの間、魔法を使うことが出来なくなる。
大悪魔女帝を包んでいた光は、次第に輝きを鈍らせ、いつしか失せていった。
その輝きを放っていた跡には、干からびた赤茶けたミイラの様な大悪魔女帝の姿があった。そして、そのミイラも、数秒後には、白い霧となって消え失せていく……。
「フフフ、ハハハハハハ」
「何が可笑しいんですの? あなた、寧樹の叔母さんに何を為さったの?!」
萌香がブラウに訊ねる。だが、ブラウは余程可笑しかったのか、直ぐには答えず、暫く経った後にやっと返事を返した。
「馬鹿な女だ。私はずっと、これを狙っていたのだと云うのに……」
「え?!」
「大悪魔皇帝が倒され、皇帝軍がこの女に因って壊滅させられた時、私は思ったのだ。『あの力があれば、私が皇帝の座に就けたものを……』とな。そのチャンスは数年後に訪れた。あの女は大悪魔の残骸を処理する為に、宇宙を掃除しておったのだ。私は奴を口先で騙し、大悪魔の窮状を訴えた。そして奴を大悪魔女帝に仕立て、このチャンスを、ずっと待っていたのだ!! これで私は、最強の大悪魔となったのだ!!」
寧樹は、そんな大悪魔を見て、寂しそうに、小さく呟いていた。
「残念ね……、耀子叔母さん……」
「あの女も哀れなもんだ……」
「哀れね……」
「精々、憐れんでやるんだな!」
「あなた……、何も分かっていない……」
「ん??」
「耀子叔母さんは、あなたの野望など、最初に会った時から分かっていた。それでも、あなたが改心してくれると思って黙っていたのよ。嘘じゃないわ。叔母さんは相手の心が読めるもの。あなたの陰謀に、耀子叔母さんが気付かない訳、ないじゃない」
「フフフ。もし、そうだと言うなら、あの女はよっぽどの間抜けだな。大悪魔女帝などと煽てられ、結局、私の踏み台として利用されてしまったのだからな」
寧樹はふうと息を吐いた。
「ハッキリ言って、耀子叔母さんの悪魔能力なんかを奪ったところで、それじゃ、大して強くなれはしないのよ」
「馬鹿を言うな!」
「それに、真の強さは力だけじゃ無い!」
「他に何があると言うのだ?!」
「そうね、時間も少しあることだし、折角だから、私の家族の歴史について、掻い摘んでお話しでもしてあげましょうか……」