入隊選抜試験(8)
文字数 1,414文字
試験から数日が経った。
あれから寧樹は、一度も萌香に声を掛けて来ない。そのままであれば、寧樹などは萌香の見た幻だと思えてくる程だ。
だが、萌香が異星人テロリストに襲われたのも事実であるし、異星人討伐隊の入隊試験を受けたのも決して夢ではない。
今、萌香の手には一枚の便箋がある。それには、異星人討伐隊非常勤隊員として合格の通知と、入隊案内の日時と場所が記されている。
萌香は、その日には学校を休んで会場に行く心算だ。萌香には絶対そうしなければならない理由がある。そうしないと、自分を含めた入生田の家族が全員殺されることになってしまうからだ。
だが、異星人討伐隊に入ることで、本当に家族を救うことが出来るのか、実は萌香にも確信がない。寧樹自身もハッキリしないと言っていた。抑々 、萌香の屋敷が焼き討ちに合うと云うことすら、寧樹の創り出した幻覚に過ぎない可能性がある。彼女だって恐らく異星人なのだ。絶対的に信用できる人物だと保証されている訳ではない。
それでも萌香は、異星人討伐隊に入隊しようと思っている。萌香には、世界を救う自信がある訳ではない。誰かの役に立つ力がある訳でもない。だが、そうすることで、何か自分が変わることが出来るような気がしていたのだ。
当日、萌香は駅まで車で送って貰った。
駅までの道程など、車で行くほどの距離も無いのだが、運転手の宮城野がどうしても送ると言うので断りきれなかったのだ。
「宮城野さん、ありがとうございます」
駅で車を降りる前に、萌香は彼に礼を言った。
「お嬢様、頑張ってくださいね」
「ええ、もう二度と仙石さんの様な人を出さない様、わたくしなりに精一杯努力させて頂きますわ」
そうして車を降り、萌香は気持ちを込めて、改札に向かう階段へと走って行った。
指定された場所、宇宙軍庁舎に入った萌香は、予想外の展開に途方に暮れてしまった。
会場に着くと、受付と書かれた紙が貼った机があって、そこで記帳すると講堂の様な場所に案内され、合格者の為の祝辞などの入社式が行われる。萌香はそんな展開を想像していたのだ。だが、そんな物はどこにも無く、ただ指定された宇宙軍の庁舎には、がらんとした玄関広場があるだけであった。
そこに現れたのは、風祭と呼ばれていた異星人討伐隊隊員である。彼は萌香を見つけると、軍人らしく小走りに彼女の元へと走り寄ってきた。
「風祭さん、お早うございます」
萌香は風祭に自分から声を掛けた。先に声を掛けられるのは、失礼になると思ったのだ。
「やあ、お嬢様、やっぱり受かったな」
「ありがとうございます。その節は助けて頂きましたのに、お礼も言わず、本当に失礼致しました」
「いや、お嬢様の言うことは正しかったよ。俺も実戦で興奮していたんだ。許してくれ」
萌香は風祭と云う隊員は、こうして話すと中々の好青年だと思う。それに顔だって結構イケメンだ。
「まだ合格者は誰もいらっしゃらない様ですけど、わたくし、どちらでお待ちすれば良いのでしょうか?」
風祭隊員はそれを聞いて大笑いした。そして、それを怪訝そうな表情で見ている萌香に気付き、慌ててその理由を説明する。
「悪い悪い。お待ちするも何も、今回の合格者はお嬢様だけだよ。お嬢様で全員さ。これから、俺が異星人討伐隊作戦室に案内するから、俺についてきてくれ」
そう言うと、後の萌香がついてくるかを確認しながら、宇宙軍のセキュリティ区域の中へと向かって歩き出した。
あれから寧樹は、一度も萌香に声を掛けて来ない。そのままであれば、寧樹などは萌香の見た幻だと思えてくる程だ。
だが、萌香が異星人テロリストに襲われたのも事実であるし、異星人討伐隊の入隊試験を受けたのも決して夢ではない。
今、萌香の手には一枚の便箋がある。それには、異星人討伐隊非常勤隊員として合格の通知と、入隊案内の日時と場所が記されている。
萌香は、その日には学校を休んで会場に行く心算だ。萌香には絶対そうしなければならない理由がある。そうしないと、自分を含めた入生田の家族が全員殺されることになってしまうからだ。
だが、異星人討伐隊に入ることで、本当に家族を救うことが出来るのか、実は萌香にも確信がない。寧樹自身もハッキリしないと言っていた。
それでも萌香は、異星人討伐隊に入隊しようと思っている。萌香には、世界を救う自信がある訳ではない。誰かの役に立つ力がある訳でもない。だが、そうすることで、何か自分が変わることが出来るような気がしていたのだ。
当日、萌香は駅まで車で送って貰った。
駅までの道程など、車で行くほどの距離も無いのだが、運転手の宮城野がどうしても送ると言うので断りきれなかったのだ。
「宮城野さん、ありがとうございます」
駅で車を降りる前に、萌香は彼に礼を言った。
「お嬢様、頑張ってくださいね」
「ええ、もう二度と仙石さんの様な人を出さない様、わたくしなりに精一杯努力させて頂きますわ」
そうして車を降り、萌香は気持ちを込めて、改札に向かう階段へと走って行った。
指定された場所、宇宙軍庁舎に入った萌香は、予想外の展開に途方に暮れてしまった。
会場に着くと、受付と書かれた紙が貼った机があって、そこで記帳すると講堂の様な場所に案内され、合格者の為の祝辞などの入社式が行われる。萌香はそんな展開を想像していたのだ。だが、そんな物はどこにも無く、ただ指定された宇宙軍の庁舎には、がらんとした玄関広場があるだけであった。
そこに現れたのは、風祭と呼ばれていた異星人討伐隊隊員である。彼は萌香を見つけると、軍人らしく小走りに彼女の元へと走り寄ってきた。
「風祭さん、お早うございます」
萌香は風祭に自分から声を掛けた。先に声を掛けられるのは、失礼になると思ったのだ。
「やあ、お嬢様、やっぱり受かったな」
「ありがとうございます。その節は助けて頂きましたのに、お礼も言わず、本当に失礼致しました」
「いや、お嬢様の言うことは正しかったよ。俺も実戦で興奮していたんだ。許してくれ」
萌香は風祭と云う隊員は、こうして話すと中々の好青年だと思う。それに顔だって結構イケメンだ。
「まだ合格者は誰もいらっしゃらない様ですけど、わたくし、どちらでお待ちすれば良いのでしょうか?」
風祭隊員はそれを聞いて大笑いした。そして、それを怪訝そうな表情で見ている萌香に気付き、慌ててその理由を説明する。
「悪い悪い。お待ちするも何も、今回の合格者はお嬢様だけだよ。お嬢様で全員さ。これから、俺が異星人討伐隊作戦室に案内するから、俺についてきてくれ」
そう言うと、後の萌香がついてくるかを確認しながら、宇宙軍のセキュリティ区域の中へと向かって歩き出した。