誰なのか(6)
文字数 1,677文字
特別招集の会議が終る間際、都内の繁華街にマンモスの着ぐるみを着た怪人が暴れ回っているとの緊急通報が討伐隊に伝えられた。それを聞いた異星人討伐隊の精鋭は、直ぐさま移送車両に乗り込み、その現場へと急行したのである。
「マンモスの着ぐるみって、剛霊武 獣だろう? 何の為に、あんな場所に剛霊武 獣を出現させたのだろう?」
風祭隊員の疑問に、萌香は一つの答えを持っている。だが、敢えて、それを口にすることは控えていた。
小田原隊長が持っている答えも、萌香のそれと同じものであったに違いない。
「板橋隊員は、移送車に残って連絡係を務めてくれ。剛霊武 獣には、私と風祭、湯本隊員で対処する。入生田隊員は後方で、伏兵が挟撃を狙っていないかの確認を頼む」
小田原隊長は、暗に板橋、入生田の両隊員を戦闘から外し、移送車ごと拉致される危険のある連絡掛かりも、萌香ではなく板橋隊員に命じた。明らかに、萌香を前後から護衛しようとの配慮であろう。
だが、それだけでは無かったのではないかと萌香は思う。何故なら、小田原隊長は、萌香との擦れ違いざまに、こう呟いたからだ。
「入生田萌香……、ならば、君は一体、何者なんだ……?」
小田原隊長たちが、マンモスの剛霊武 獣と闘っている最中であった。寧樹が萌香に心の中で叫んだのは。
「行くわよ、萌香! でも、今回も悪いんだけどさ、私が闘うわ。ヤバい相手じゃないんだけど、あなたが行くと、一寸 厄介な事になりそうだから……」
「了解ですわ!」
萌香が金の腕輪を抜き取ると、眩い輝きに包まれ、萌香は一気にネイジュに変身し、空に舞い上がった。
時計台が屋上にある、繁華街の交差点のビル。その屋上に舞い降り、寧樹は目の前に立つ黒の燕尾服の男に微笑み掛ける。
ネイジュの登場に驚きもせず、燕尾服の男は寧樹に笑い返した。
「フフフフ、剛霊武 獣を無視しでも、私を倒すべきと考えたのですか? 流石ですね」
「そんな訳ないわ。あなたも、剛霊武 獣も、私から見れば大した違いはないもの。ここに来た理由はね、剛霊武 獣の方は、異星人討伐隊の方々が既に闘っていたからだけよ」
「舐めやがって……」
「あらあら、もう素を出すの? ま、いいわ。あなた、お名前は?」
「ははははは。私はブラウ。大悪魔女帝の右腕とも云うべき腹心であり、執事として彼女を支える有能な悪魔ですよ」
「有能な悪魔?」
これには、余程可笑しかったのか、寧樹は笑い堪えられず、腹を抱えてしまっていた。
「大悪魔女帝って、余程、人材不足なのね、あなた見たいのを、事もあろうか副官に置いておくなんて……」
ブラウと云う大悪魔は、余程腹が立ったのか、顔を赤くして、痙攣したかの様に細かく震えていた。
「許さんぞ、サント・ネイジュ!」
その眼下に広がる繁華街の交差点、そこではマンモスの剛霊武 獣と異星人討伐隊の精鋭が戦っていた。
「私と湯本が、正面から敵を食い止める。風祭は剛霊武 獣の後に回って、後から狙撃するんだ!」
小田原隊長はそう云うと、自らマンモスの剛霊武 獣に素手で立ち向かう。
剛霊武 獣は、長い鼻と大きく反り返っている二本の牙を使って攻撃してきた。顔を左右に振り、少し離れた敵には撓る長い鼻を鞭の様に、それを躱して接近してきた敵には頑丈な牙を棍棒の様にぶつけてだ。
湯本隊員は、その長い鼻の攻撃が掠り、その場に倒される。それを剛霊武 獣が踏みつけようと、右の前足を持ち上げた。しかし、それは踏み降ろされなかった。
剛霊武 獣は右だけでなく、左の前足までも浮き上がらせ、そのまま後へと投げ飛ばされたのである。小田原隊長が剛霊武 獣の腰辺りにしがみ付き、そのまま後方へと投げ落としたのだ。
勿論、その程度では剛霊武 獣にダメージは与えられない。と言うか、剛霊武 獣の体は痛みを感じる神経が、不完全な形でしか修復されていない。しかし、それは体の接続部分などに破損が起こっても、彼には気付きにくいと云う欠点も持っていた。
小田原隊長は、そんな敵の弱点を関節技で的確に突いてくる。彼は倒された剛霊武 獣の後足を狙って、素早く踝にしがみ付き逆に捻りあげたのだ。
「マンモスの着ぐるみって、
風祭隊員の疑問に、萌香は一つの答えを持っている。だが、敢えて、それを口にすることは控えていた。
小田原隊長が持っている答えも、萌香のそれと同じものであったに違いない。
「板橋隊員は、移送車に残って連絡係を務めてくれ。
小田原隊長は、暗に板橋、入生田の両隊員を戦闘から外し、移送車ごと拉致される危険のある連絡掛かりも、萌香ではなく板橋隊員に命じた。明らかに、萌香を前後から護衛しようとの配慮であろう。
だが、それだけでは無かったのではないかと萌香は思う。何故なら、小田原隊長は、萌香との擦れ違いざまに、こう呟いたからだ。
「入生田萌香……、ならば、君は一体、何者なんだ……?」
小田原隊長たちが、マンモスの
「行くわよ、萌香! でも、今回も悪いんだけどさ、私が闘うわ。ヤバい相手じゃないんだけど、あなたが行くと、
「了解ですわ!」
萌香が金の腕輪を抜き取ると、眩い輝きに包まれ、萌香は一気にネイジュに変身し、空に舞い上がった。
時計台が屋上にある、繁華街の交差点のビル。その屋上に舞い降り、寧樹は目の前に立つ黒の燕尾服の男に微笑み掛ける。
ネイジュの登場に驚きもせず、燕尾服の男は寧樹に笑い返した。
「フフフフ、
「そんな訳ないわ。あなたも、
「舐めやがって……」
「あらあら、もう素を出すの? ま、いいわ。あなた、お名前は?」
「ははははは。私はブラウ。大悪魔女帝の右腕とも云うべき腹心であり、執事として彼女を支える有能な悪魔ですよ」
「有能な悪魔?」
これには、余程可笑しかったのか、寧樹は笑い堪えられず、腹を抱えてしまっていた。
「大悪魔女帝って、余程、人材不足なのね、あなた見たいのを、事もあろうか副官に置いておくなんて……」
ブラウと云う大悪魔は、余程腹が立ったのか、顔を赤くして、痙攣したかの様に細かく震えていた。
「許さんぞ、サント・ネイジュ!」
その眼下に広がる繁華街の交差点、そこではマンモスの
「私と湯本が、正面から敵を食い止める。風祭は
小田原隊長はそう云うと、自らマンモスの
湯本隊員は、その長い鼻の攻撃が掠り、その場に倒される。それを
勿論、その程度では
小田原隊長は、そんな敵の弱点を関節技で的確に突いてくる。彼は倒された