魅了する甘い香り(8)
文字数 1,555文字
異星人3人も、サント・ネイジュの底知れぬ強さに、どう抵抗して良いか、最早考えも及ばなかった。
だが、そうは言っても、簡単に降参する訳にも行かない。取り敢えず会話を仕掛け、そこから突破口となる何らかの情報が得られはしないか……。そう考えた与那国燦が、別の話題を持ちかけてみた。
「でもさ、どうして黒筋や志郎のフェロモンが作用しなかったんだい? 君だって、一応、女の子なんだろう?」
「『一応、女の子……』って、それ、ちょっと失礼じゃないかしら?」
ネイジュは一旦口を尖らせてから、少し笑って答えを続けた。
「私も『魅了』の能力を持っているから、その手の攻撃には耐性があるのよ」
「僕には、君にそんな力がある様には思えないけどなぁ」
少しムッとしたネイジュは、火取志郎に大悪魔能力である『魅了』を仕掛ける。勿論、その作用に気付く者は、志郎以外にはあり得ない。
「志郎、私を侮辱した与那国燦に、天誅を与えなさい!」
志郎は、ネイジュを侮辱するなどと言う大犯罪を犯した燦を許すことが出来なかった。そう、それが同じ星の異星人だとしてもだ。
「よくも彼女を侮辱したな!」
火取志郎はそう叫んで与那国燦に殴り掛かる。不意を衝かれた燦は、間一髪で仲間からの攻撃を躱した。そして、それと同時にネイジュがパンと柏手を打って術を解く。
「どう? 分かったかしら?」
我に返った志郎の目には、驚愕の色と同時に恐怖が浮かび上がっていた。彼には仲間を攻撃した記憶が残っており、その行為が間違っていないと信じていたこともハッキリと覚えているのだ。そう、彼は価値基準を変えられて、何も疑いも無く味方を攻撃していたのであった。
これは異性を性的に惹きつける彼らのフェロモン攻撃などと云うレベルのものでは無い。それはもう、瞬間的に操り人形にしてしまう、洗脳に近い悪夢の様な攻撃であった。
「でも安心して。これは凄く下品だから、私たちも、普段は使わないことにしているの。もう絶対しないから大丈夫よ」
与那国燦は絶望に言葉を失っていた。それ以上に心が折られたのは、火取志郎と黒筋の二人であった。彼らはもう「この相手だけは絶対に逆らってはならない。何があっても服従するしか無い」と思っていたのだ。
「こ、降参する……」
それを言ったのが、3人の内誰かは分からない。だが、誰が言ったとしても、反対する者は3人の中にありはしなかった。
だが敵全員が、まだ絶対に勝ち目が無いと思っていた訳ではない。
彼らが降伏の言葉を発した瞬間、部屋の出入口全てがシャッターで閉ざされたのだ。そして天井から女の声が聞こえてくる。
「ヨナグニ、私の同族であるお前が、死を恐れ、こんな女1人を相手に降伏するとは、恥を知れ!」
「コメット……」
「寧樹、あの女主人が首領だったのですね」
余りの展開に、成り行きを黙って見守っていた萌香が、久し振りに寧樹に話し掛けた。
「ええ、そうよ。彼女がこの侵略部隊のリーダー。モス星人の士官なの」
寧樹はそう萌香に説明してから、コメット・モスに降伏するよう声を上げた。
「あなたも、もう止めたら? 小隊レベルの規模で星が侵略できる訳ないでしょう! それに、仮に征服できたとしても、地球人と在住異星人の全てを統率できる訳なんか、ある訳ないじゃない。ところで、抑々 、あなた方モス星人って、なんで地球なんかに侵略しに来たの?」
「五月蝿い! お前になど話しても無駄だ。お前はこの場所で『ヒッコリーホーンド』に因って潰され、生き埋めになってしまうのだ! もう『ヒッコリーホーンド』は、直ぐそこまで来ているのだ!!」
「そんなことしたら、与那国君たちも、一緒に潰されてしまうわよ」
「その様な軟弱な輩、生きている価値などない!!」
ネイジュはそれを聞いて、「あらあら」と肩をすくめた。
だが、そうは言っても、簡単に降参する訳にも行かない。取り敢えず会話を仕掛け、そこから突破口となる何らかの情報が得られはしないか……。そう考えた与那国燦が、別の話題を持ちかけてみた。
「でもさ、どうして黒筋や志郎のフェロモンが作用しなかったんだい? 君だって、一応、女の子なんだろう?」
「『一応、女の子……』って、それ、ちょっと失礼じゃないかしら?」
ネイジュは一旦口を尖らせてから、少し笑って答えを続けた。
「私も『魅了』の能力を持っているから、その手の攻撃には耐性があるのよ」
「僕には、君にそんな力がある様には思えないけどなぁ」
少しムッとしたネイジュは、火取志郎に大悪魔能力である『魅了』を仕掛ける。勿論、その作用に気付く者は、志郎以外にはあり得ない。
「志郎、私を侮辱した与那国燦に、天誅を与えなさい!」
志郎は、ネイジュを侮辱するなどと言う大犯罪を犯した燦を許すことが出来なかった。そう、それが同じ星の異星人だとしてもだ。
「よくも彼女を侮辱したな!」
火取志郎はそう叫んで与那国燦に殴り掛かる。不意を衝かれた燦は、間一髪で仲間からの攻撃を躱した。そして、それと同時にネイジュがパンと柏手を打って術を解く。
「どう? 分かったかしら?」
我に返った志郎の目には、驚愕の色と同時に恐怖が浮かび上がっていた。彼には仲間を攻撃した記憶が残っており、その行為が間違っていないと信じていたこともハッキリと覚えているのだ。そう、彼は価値基準を変えられて、何も疑いも無く味方を攻撃していたのであった。
これは異性を性的に惹きつける彼らのフェロモン攻撃などと云うレベルのものでは無い。それはもう、瞬間的に操り人形にしてしまう、洗脳に近い悪夢の様な攻撃であった。
「でも安心して。これは凄く下品だから、私たちも、普段は使わないことにしているの。もう絶対しないから大丈夫よ」
与那国燦は絶望に言葉を失っていた。それ以上に心が折られたのは、火取志郎と黒筋の二人であった。彼らはもう「この相手だけは絶対に逆らってはならない。何があっても服従するしか無い」と思っていたのだ。
「こ、降参する……」
それを言ったのが、3人の内誰かは分からない。だが、誰が言ったとしても、反対する者は3人の中にありはしなかった。
だが敵全員が、まだ絶対に勝ち目が無いと思っていた訳ではない。
彼らが降伏の言葉を発した瞬間、部屋の出入口全てがシャッターで閉ざされたのだ。そして天井から女の声が聞こえてくる。
「ヨナグニ、私の同族であるお前が、死を恐れ、こんな女1人を相手に降伏するとは、恥を知れ!」
「コメット……」
「寧樹、あの女主人が首領だったのですね」
余りの展開に、成り行きを黙って見守っていた萌香が、久し振りに寧樹に話し掛けた。
「ええ、そうよ。彼女がこの侵略部隊のリーダー。モス星人の士官なの」
寧樹はそう萌香に説明してから、コメット・モスに降伏するよう声を上げた。
「あなたも、もう止めたら? 小隊レベルの規模で星が侵略できる訳ないでしょう! それに、仮に征服できたとしても、地球人と在住異星人の全てを統率できる訳なんか、ある訳ないじゃない。ところで、
「五月蝿い! お前になど話しても無駄だ。お前はこの場所で『ヒッコリーホーンド』に因って潰され、生き埋めになってしまうのだ! もう『ヒッコリーホーンド』は、直ぐそこまで来ているのだ!!」
「そんなことしたら、与那国君たちも、一緒に潰されてしまうわよ」
「その様な軟弱な輩、生きている価値などない!!」
ネイジュはそれを聞いて、「あらあら」と肩をすくめた。