とある地方都市にて(8)
文字数 1,803文字
「じゃぁ、勝負は明日からってことにして、折角ここまで来たんだから、駅向うにある世界遺産センターでも見ていく?」
大悪魔女帝が萌香に訊ねた。だが、萌香の方は、それに直ぐ答えることは出来なかった。その替わり、寧樹がそれに答える。
「叔母さんが奢ってくれるの?」
「もう。何時まで子供でいる心算? でも良いわ。今日は特別、2人に奢ってあげる」
本当だったら、楽しい見学だったのかも知れない。だが、萌香は何となく割り切れないものを感じていた。
「あの……。質問して宜しいですか?」
「え、何かしら?」
「大悪魔にとって……、人間って、何なのでございますか?」
「どうしたの? 萌香ちゃん」
萌香はここで云うべきことか迷った。仮にそれを言って、大悪魔女帝、そして寧樹に理解して貰えるか自信が無かった。でも言わずにはいられなかった。
「この戦いでは、多くの人間が死んだり、在住異星人にも少なからず死者が出ています。彼らを殺しているのは、確かに私たち人間です。でも、それは、わたくしたち人間も、生きる為に必死だからなのです。
この戦いは、人間にとって大切な戦いです。わたくしも命を賭けて戦っておりますし、異星人討伐隊のメンバーも同様だと思っております。
寧樹がそれを手助けしてくれるのは、有難いことだと思っておりますわ。でも、わたくしたちにとって、この戦いは、決してゲームなどではありませんの……。
それを、ルールを決めて……、負けた方が手を引くなんて……。
わたくしたち人間って、何なのですか? あなたがた大悪魔の、ゲームの商品に過ぎないのですか?
もう少し、真剣に戦ってはくれませんか?
わたくしたち、人間の、未来が賭かっているのですよ……」
「萌香……」
大悪魔女帝はひとつ息を吐いた。
「そうね、萌香ちゃんの云う通りね。
でも、言っておくけど、ルールは必須なのよ。殺し合いの戦争だとしてもね。人間同士の戦争でも、非人道的兵器は使っちゃいけない。人権を犯しちゃいけない……なんてルールがあるわ。その理由はね、それを失くしたら、その被害によって人類が滅んでしまう危険があるからなのよ。
確かに可笑しいわよね。殺し殺されていくのにルールがあるなんて……。でもね、そのルールを設けたのは、恐らく最後の良心だったのじゃないかしら。これを越えてはいけないって言うね。
私たちの戦いにもルールが必要なの。
私たちが相手を倒す為に、何も忖度しなくなったら、地球どころか、太陽系、下手したら時空そのものを壊してしまうかも知れないのよ。だからルールも決めるし、やり過ぎない様にゲームとしているの」
「でも……」
「人間の戦争で例えるとね、使っちゃいけない武器があることが問題じゃなくて、戦争を始めたことが問題じゃないかしら? 人間が沢山死ぬことが分かっていながら、名誉か何の為だか知らないけど、武器を手に取ったことが抑々 の過ちなのよ。
今回のことでもそう。
私が剛霊武 獣を造る以前、有希ちゃんがそれを阻止しようするもっと前に、土着人類と在住異星人がお互いの意見をぶつけ合い、相手の文化や行動様式を理解して、不満に妥協することだって出来たんじゃない? それを出来なかったことが全て悪いのよ。もっと昔に、こうならないチャンスは、人類にも幾らでも在った筈よ。
私たちなんか、所詮、追加で配備された武器程度の意味でしかないわ。そのボタンを押すのに人道的な制限が在って使用出来ないからと言って、『死ぬか生きるかの戦争をしているんだ。だから、殺戮兵器だろうが何だろうが、自由に使わせろ!』と、戦争を始めた人たちが言ったとしても、他の国から見たら非人道的な暴論にしか聞こえないし、不当な不満にしか思えないわよね」
萌香は返す言葉が無かった。
人類が異星人を排除しようとしたのが、確かに全ての発端なのだ……。
萌香自身は、別に異星人を忌み嫌っていた訳ではない。ただ、尊敬する祖父が、異星人は地球に住むべきではないと言うのを、何も疑わず正しいことと信じていただけだった。
それでも、この問題に目を逸らしていたと云う意味では、萌香にだって責任が無いと言えはしない。
「萌香ちゃんは、私と見学なんてしている気分じゃ無さそうね。じゃぁ有希ちゃん、私は帰るけど、あなたも気を付けてね……」
大悪魔女帝はそう言い残すと、瞬間移動を使ったらしく、その場から煙の様に一瞬で消え去っていた。
大悪魔女帝が萌香に訊ねた。だが、萌香の方は、それに直ぐ答えることは出来なかった。その替わり、寧樹がそれに答える。
「叔母さんが奢ってくれるの?」
「もう。何時まで子供でいる心算? でも良いわ。今日は特別、2人に奢ってあげる」
本当だったら、楽しい見学だったのかも知れない。だが、萌香は何となく割り切れないものを感じていた。
「あの……。質問して宜しいですか?」
「え、何かしら?」
「大悪魔にとって……、人間って、何なのでございますか?」
「どうしたの? 萌香ちゃん」
萌香はここで云うべきことか迷った。仮にそれを言って、大悪魔女帝、そして寧樹に理解して貰えるか自信が無かった。でも言わずにはいられなかった。
「この戦いでは、多くの人間が死んだり、在住異星人にも少なからず死者が出ています。彼らを殺しているのは、確かに私たち人間です。でも、それは、わたくしたち人間も、生きる為に必死だからなのです。
この戦いは、人間にとって大切な戦いです。わたくしも命を賭けて戦っておりますし、異星人討伐隊のメンバーも同様だと思っております。
寧樹がそれを手助けしてくれるのは、有難いことだと思っておりますわ。でも、わたくしたちにとって、この戦いは、決してゲームなどではありませんの……。
それを、ルールを決めて……、負けた方が手を引くなんて……。
わたくしたち人間って、何なのですか? あなたがた大悪魔の、ゲームの商品に過ぎないのですか?
もう少し、真剣に戦ってはくれませんか?
わたくしたち、人間の、未来が賭かっているのですよ……」
「萌香……」
大悪魔女帝はひとつ息を吐いた。
「そうね、萌香ちゃんの云う通りね。
でも、言っておくけど、ルールは必須なのよ。殺し合いの戦争だとしてもね。人間同士の戦争でも、非人道的兵器は使っちゃいけない。人権を犯しちゃいけない……なんてルールがあるわ。その理由はね、それを失くしたら、その被害によって人類が滅んでしまう危険があるからなのよ。
確かに可笑しいわよね。殺し殺されていくのにルールがあるなんて……。でもね、そのルールを設けたのは、恐らく最後の良心だったのじゃないかしら。これを越えてはいけないって言うね。
私たちの戦いにもルールが必要なの。
私たちが相手を倒す為に、何も忖度しなくなったら、地球どころか、太陽系、下手したら時空そのものを壊してしまうかも知れないのよ。だからルールも決めるし、やり過ぎない様にゲームとしているの」
「でも……」
「人間の戦争で例えるとね、使っちゃいけない武器があることが問題じゃなくて、戦争を始めたことが問題じゃないかしら? 人間が沢山死ぬことが分かっていながら、名誉か何の為だか知らないけど、武器を手に取ったことが
今回のことでもそう。
私が
私たちなんか、所詮、追加で配備された武器程度の意味でしかないわ。そのボタンを押すのに人道的な制限が在って使用出来ないからと言って、『死ぬか生きるかの戦争をしているんだ。だから、殺戮兵器だろうが何だろうが、自由に使わせろ!』と、戦争を始めた人たちが言ったとしても、他の国から見たら非人道的な暴論にしか聞こえないし、不当な不満にしか思えないわよね」
萌香は返す言葉が無かった。
人類が異星人を排除しようとしたのが、確かに全ての発端なのだ……。
萌香自身は、別に異星人を忌み嫌っていた訳ではない。ただ、尊敬する祖父が、異星人は地球に住むべきではないと言うのを、何も疑わず正しいことと信じていただけだった。
それでも、この問題に目を逸らしていたと云う意味では、萌香にだって責任が無いと言えはしない。
「萌香ちゃんは、私と見学なんてしている気分じゃ無さそうね。じゃぁ有希ちゃん、私は帰るけど、あなたも気を付けてね……」
大悪魔女帝はそう言い残すと、瞬間移動を使ったらしく、その場から煙の様に一瞬で消え去っていた。