勝利、だが……(7)
文字数 1,371文字
寧樹の元に、小田原隊長こと、異星人共生型強化人間の鈴木挑が近づいてくる。
「終ったな。これで……」
それを聞いた寧樹は、今度は笑顔を真顔に戻して話し出す。
「いいえ。私たちは勝利しました。でも、何も終っていないのです。これからが本当の戦いなのですよ。
これだけこの星に関わってしまった私には、もう、この星の未来を予知することは出来ません。ですが、矢張り、このままでは人類と異星人との間に、明るい未来が待っているとは思えないのです。
それは昔から、漁夫の利などの故事で、いがみ合いは、どちらにも得がなく、第三者に利を与えるだけだと、誰もが分かっている筈なのですが……」
「今回、第三者の大悪魔は、その利を得ることは出来なかった様でございますけどね……。あ、寧樹も大悪魔でしたっけ……」
寧樹は、萌香の言葉を否定する。
「私は大悪魔じゃないわよ」
「そうでしたわね、ハイブリッドのいいとこどりでしたっけ……」
寧樹は一息吐いてから、大悪魔について、別の解釈の説明を始めた。
「大悪魔ってね、具体的な定義が無いんだけど、パパたちは『時空を股にかけ、略奪を繰り返す無法者たち』って考えているの。
でね、大悪魔であるかどうかって判断基準は2つあって、それをみんな、ごちゃ混ぜにして使っているみたいなのよ。
1つは『時空を股にかけ、略奪を繰り返す種族』。もう1つは『時空を股にかけ、略奪を繰り返す人達』……」
「違うのでございますか?」
「まあ聞いて……。
最初の定義は、種族だからどこに言っても大悪魔は大悪魔よね。一方、2番目のは、略奪を繰り返す人だから、略奪を止めたり、時空を股に掛けるのを止めて、特定の時空に永住したら大悪魔じゃなくなっちゃう。
大体の大悪魔は最初の定義、つまり大悪魔って種族があって、その血筋かどうかで判断しているみたいだけど、パパや耀子叔母さんは、2番目の定義で話していることが多いわね。
分かり難いかなぁ……。
そうね、耀子叔母さんも私も、時空は違うけど日本生まれだし、萌香や挑さんも日本人だから、日本人で説明しましょうか?
日本人の定義って何かしら?
人種で言っている人もいるわよね。外国に移住しても日本人だ。同胞だってね。それとは別に、国籍で言っている人もいるわよね。日本国籍を取ったら、もう日本人だってね。
どちらが正解なのかしら?
どっちも正解かも知れないわね。
でも、比較的古い習慣に囚われている人は、血統や血筋ってものに拘っている気がするし、逆にリベラルな考えの人たちは、血筋よりも思想や個人の生活習慣でカテゴリー分けしている気がする。
パパや耀子叔母さんは、自分たちを人間だと考えている。勿論、大悪魔能力も使うし、悪魔種族の血筋であることも否定はしていないのだけど、言葉の端々に『大悪魔を止めた』なんて言っているもの。大悪魔を止めるってことは、もう大悪魔じゃないってことよね!」
萌香は思う。
「地球人の定義って何なのでしょう?」と。
そして、言葉として想いを発する。
「地球に住んでいらっしゃる方が地球人だと定義するのでしたら、在住異星人と云う人たちも、地球人に他ならないではないでしょうか? 少なくとも、地球でお生まれになったのであれば、ご両親が異星から移住されたのだとしても、地球人として認めるべきなのではないでしょうか?」
「終ったな。これで……」
それを聞いた寧樹は、今度は笑顔を真顔に戻して話し出す。
「いいえ。私たちは勝利しました。でも、何も終っていないのです。これからが本当の戦いなのですよ。
これだけこの星に関わってしまった私には、もう、この星の未来を予知することは出来ません。ですが、矢張り、このままでは人類と異星人との間に、明るい未来が待っているとは思えないのです。
それは昔から、漁夫の利などの故事で、いがみ合いは、どちらにも得がなく、第三者に利を与えるだけだと、誰もが分かっている筈なのですが……」
「今回、第三者の大悪魔は、その利を得ることは出来なかった様でございますけどね……。あ、寧樹も大悪魔でしたっけ……」
寧樹は、萌香の言葉を否定する。
「私は大悪魔じゃないわよ」
「そうでしたわね、ハイブリッドのいいとこどりでしたっけ……」
寧樹は一息吐いてから、大悪魔について、別の解釈の説明を始めた。
「大悪魔ってね、具体的な定義が無いんだけど、パパたちは『時空を股にかけ、略奪を繰り返す無法者たち』って考えているの。
でね、大悪魔であるかどうかって判断基準は2つあって、それをみんな、ごちゃ混ぜにして使っているみたいなのよ。
1つは『時空を股にかけ、略奪を繰り返す種族』。もう1つは『時空を股にかけ、略奪を繰り返す人達』……」
「違うのでございますか?」
「まあ聞いて……。
最初の定義は、種族だからどこに言っても大悪魔は大悪魔よね。一方、2番目のは、略奪を繰り返す人だから、略奪を止めたり、時空を股に掛けるのを止めて、特定の時空に永住したら大悪魔じゃなくなっちゃう。
大体の大悪魔は最初の定義、つまり大悪魔って種族があって、その血筋かどうかで判断しているみたいだけど、パパや耀子叔母さんは、2番目の定義で話していることが多いわね。
分かり難いかなぁ……。
そうね、耀子叔母さんも私も、時空は違うけど日本生まれだし、萌香や挑さんも日本人だから、日本人で説明しましょうか?
日本人の定義って何かしら?
人種で言っている人もいるわよね。外国に移住しても日本人だ。同胞だってね。それとは別に、国籍で言っている人もいるわよね。日本国籍を取ったら、もう日本人だってね。
どちらが正解なのかしら?
どっちも正解かも知れないわね。
でも、比較的古い習慣に囚われている人は、血統や血筋ってものに拘っている気がするし、逆にリベラルな考えの人たちは、血筋よりも思想や個人の生活習慣でカテゴリー分けしている気がする。
パパや耀子叔母さんは、自分たちを人間だと考えている。勿論、大悪魔能力も使うし、悪魔種族の血筋であることも否定はしていないのだけど、言葉の端々に『大悪魔を止めた』なんて言っているもの。大悪魔を止めるってことは、もう大悪魔じゃないってことよね!」
萌香は思う。
「地球人の定義って何なのでしょう?」と。
そして、言葉として想いを発する。
「地球に住んでいらっしゃる方が地球人だと定義するのでしたら、在住異星人と云う人たちも、地球人に他ならないではないでしょうか? 少なくとも、地球でお生まれになったのであれば、ご両親が異星から移住されたのだとしても、地球人として認めるべきなのではないでしょうか?」