入生田萌香(6)
文字数 1,366文字
「じゃ、あなたの目的は何なの! わたくしなんか、何も出来ないのに……」
「あら、分かってるじゃない?」
「そんなの最初から知っていますわ。入生田重国の孫だってのを取ったら、わたくしには何も残りはしないって……。さっきのだって、あなたに態々聞かされなくたって、皆がそう思っている事なんか最初から全部分かっていました」
「そこまで分かってるんなら、話は早そうね。そうよ、勿論、あなたを選んだ理由は、あなたが入生田重国氏の孫娘だからよ」
「続きの話は、私の家で聞かせて貰ってよろしいかしら? 正直、疲れましたわ……」
萌香はそう心の中で呟くと、そのまま授業をする為に来た教師に、体調が悪いと伝え、荷物を纏め早退することにした。教員たちからは、家から車を呼ぶか、タクシーでも頼むことを勧められたのだが……。
家に帰ると、萌香は心配する使用人に「大したことない」と言い部屋に籠った。そう言うことは珍しくもないので、使用人の心配の言葉も形式的なものでしかない。
そうして自分の机に突っ伏すと、そのままの状態で心の中にいる寧樹に、彼女の目的を伝える様に促す。正直、それがどの様な邪悪な目論みであっても、寧樹の言うことに従おうかと云う気分であった。
「萌香ちゃん、あなたには、この世界を救って貰いたいのよ」
「世界を救うですって? そんなの無理に決まっているじゃありませんか! わたくしは、あなたが言ったように、何も出来ない無能な人間なのですよ。それが、どうして?」
「う~ん、こう言うと失礼かも知れないけど……、ま、今は分身みたいなものだから、赦してくれるわよね」
萌香は「何を今更」と思う。
「あなたを選んだ理由は、入生田重国氏の孫娘だってことも当然あるけど、それと萌香ちゃんのその無能さにあるのよ」
「本当、失礼ですこと。失礼序 でに萌香って呼び捨てでよろしくてよ。あなた、わたくしの分身なのでしょう?」
「じゃ、私のことは寧樹って呼んでね」
「で、無能な私の、何処がよろしいと言うのかしら?」
「自分には力が無いって知っている人の方が、自分が何でも出来るって思っている人より遥かに強いの。萌香は自分では何も出来ないけど、人を頼ることが出来る。そこを私は買っているのよ」
「私、寧樹に褒められてるんだが、馬鹿にされているのだか……」
「勿論、褒めてるわよ! でね、私ね、従姉妹 に頼まれちゃったのよ、『この時空を救って欲しい』って」
「いとこぉ?」
「そうなの。叔母の養女……、伯母だったかな? で、その従姉妹が私と仲良いんだけど、この時空の出身なのよ。私、彼女から、『この時空の異星人が不当に迫害されない様に』って、お願いされちゃったの」
「この時空の出身? 時空を救う?」
「そうよ、この地球に住んでた人間」
「ここに住んでた人間が、なんで異星人を守ろうとするの?」
「変? 萌香は、なんで別の種族と仲良く出来ないかなぁ?」
「だって、異星人が、この星のルールを守らずに、身勝手な事ばかりするからではありませんか?」
「じゃ、在来の人間と同じように、異星人が地球のルールを守ったら、異星人が地球に住んでも良いと云うことね?」
「それは駄目ですわ。だって、異星人って特殊能力があるじゃありませんか。同じように競争されたら、人類は皆、異星人に駆逐されてしまいますもの」
「それはそうかもね……」
「あら、分かってるじゃない?」
「そんなの最初から知っていますわ。入生田重国の孫だってのを取ったら、わたくしには何も残りはしないって……。さっきのだって、あなたに態々聞かされなくたって、皆がそう思っている事なんか最初から全部分かっていました」
「そこまで分かってるんなら、話は早そうね。そうよ、勿論、あなたを選んだ理由は、あなたが入生田重国氏の孫娘だからよ」
「続きの話は、私の家で聞かせて貰ってよろしいかしら? 正直、疲れましたわ……」
萌香はそう心の中で呟くと、そのまま授業をする為に来た教師に、体調が悪いと伝え、荷物を纏め早退することにした。教員たちからは、家から車を呼ぶか、タクシーでも頼むことを勧められたのだが……。
家に帰ると、萌香は心配する使用人に「大したことない」と言い部屋に籠った。そう言うことは珍しくもないので、使用人の心配の言葉も形式的なものでしかない。
そうして自分の机に突っ伏すと、そのままの状態で心の中にいる寧樹に、彼女の目的を伝える様に促す。正直、それがどの様な邪悪な目論みであっても、寧樹の言うことに従おうかと云う気分であった。
「萌香ちゃん、あなたには、この世界を救って貰いたいのよ」
「世界を救うですって? そんなの無理に決まっているじゃありませんか! わたくしは、あなたが言ったように、何も出来ない無能な人間なのですよ。それが、どうして?」
「う~ん、こう言うと失礼かも知れないけど……、ま、今は分身みたいなものだから、赦してくれるわよね」
萌香は「何を今更」と思う。
「あなたを選んだ理由は、入生田重国氏の孫娘だってことも当然あるけど、それと萌香ちゃんのその無能さにあるのよ」
「本当、失礼ですこと。失礼
「じゃ、私のことは寧樹って呼んでね」
「で、無能な私の、何処がよろしいと言うのかしら?」
「自分には力が無いって知っている人の方が、自分が何でも出来るって思っている人より遥かに強いの。萌香は自分では何も出来ないけど、人を頼ることが出来る。そこを私は買っているのよ」
「私、寧樹に褒められてるんだが、馬鹿にされているのだか……」
「勿論、褒めてるわよ! でね、私ね、
「いとこぉ?」
「そうなの。叔母の養女……、伯母だったかな? で、その従姉妹が私と仲良いんだけど、この時空の出身なのよ。私、彼女から、『この時空の異星人が不当に迫害されない様に』って、お願いされちゃったの」
「この時空の出身? 時空を救う?」
「そうよ、この地球に住んでた人間」
「ここに住んでた人間が、なんで異星人を守ろうとするの?」
「変? 萌香は、なんで別の種族と仲良く出来ないかなぁ?」
「だって、異星人が、この星のルールを守らずに、身勝手な事ばかりするからではありませんか?」
「じゃ、在来の人間と同じように、異星人が地球のルールを守ったら、異星人が地球に住んでも良いと云うことね?」
「それは駄目ですわ。だって、異星人って特殊能力があるじゃありませんか。同じように競争されたら、人類は皆、異星人に駆逐されてしまいますもの」
「それはそうかもね……」