第57話
文字数 4,663文字
「…すでに、そうなっているって、どういうことですか?…」
「…透(とおる)ですよ…水野透(とおる)…」
「…透(とおる)さんが、どうかしましたか?…」
「…透(とおる)が、フライデーで、写真を撮られた相手は、秋穂ですよ…忘れたんですか? 高見さん…」
そうだ…
すっかり忘れていた…
たしかに、そうだった…
あの水野透(とおる)は、秋穂さんと、いるところを、写真に撮られた…
だから、大騒ぎになった…
なぜなら、水野透(とおる)は、すでに、米倉好子と結婚している…
しかも、二人の結婚は、ただの結婚ではない…
二人の結婚は、水野と米倉の提携の象徴…
二人が、結婚することで、水野と米倉は、提携し、やがて、合併する…
そのための結婚だった…
なにより、米倉は、水野なしでは、生きれない…
水野なしでは、生き残れない…
だから、二人の結婚は、米倉を救済するための結婚…
米倉の経営する大日産業が、苦境に陥り、破綻寸前になった…
その危機を回避するために、大日産業の莫大な負債を隠して、水野と提携した…
いわば、水野を騙して、米倉を救うために、利用したのだ…
それを知った水野家当主の水野良平は、激怒したが、結局は、息子の透(とおる)が、強引に、好子さんとの結婚を望んだから、その意を汲んで、結婚を認めた…
だから、普通に考えれば、二人は、簡単に別れることが、できないはずだった…
二人の離婚は、水野と米倉の提携の解消を意味する…
そしてそれは、同時に、米倉の…大日産業の破綻を意味する…
だから、離婚は、できないはずだった…
が、
離婚では、なかったが、透(とおる)の不倫が、発覚した…
不倫=浮気が、発覚した…
そして、それを契機に、水野と米倉の提携は、解消…
米倉は、路頭に迷うと思われたが、思いがけず、あの五井が、手を差し伸べた…
そういうことだった…
「…透(とおる)は、ホントは、高見さんが、好きだったんですよ…」
「…私が、好きだった?…」
「…そうです…」
「…でも、だったら、どうして、透(とおる)さんは、好子さんと結婚したんですか?…」
「…それは、好子も好きだって、ことです…」
「…好子さんも好き?…」
「…たぶん、透(とおる)は、高見さんも、好きだし、好子のことも、好きだったんだと、思います…二人とも、甲乙つけがたいほど、好きだったんだと、思います…」
「…だったら、どうして、透(とおる)さんは、好子さんと、結婚したんですか?…」
「…それは、たぶん…」
「…たぶん、なんですか?…」
「…米倉を…好子を救うためだったと、思います…」
「…好子さんを救うため?…」
「…あのままでは、間違いなく、米倉は、没落した…大日産業は、倒産…これは、逃れられなかった…」
「…」
「…そして、透(とおる)は、好子と、幼馴染(おさななじみ)です…幼い頃から、父親を通じて、米倉、水野、双方の屋敷に出入りしていた…だから、米倉の苦境を知って、透(とおる)は、好子を、放って、置けなかった…」
「…」
「…米倉が、没落することは、好子が、路頭に迷うこと…それを、見ないフリをすることが、透(とおる)には、できなかった…」
「…」
「…だから、透(とおる)は、高見さんではなく、好子と、結婚した…苦境に陥った米倉を助けることで、好子を救おうとした…」
そんなことが…
そんなことが、あったとは?
まったく、気付かなかった…
だから、透(とおる)は、好子さんを、選んだ…
私、高見ちづるではなく、好子さんを選んだ…
そういうことだったのか?
私は、思った…
すると、
「…結婚は、タイミングですよ…」
と、電話の向こう側から、正造が、告げた…
「…タイミング?…」
「…そうです…付き合っている女が、妊娠したのを、契機に、結婚するのは、世の中には、ありふれています…それが、透(とおる)にとっては、米倉の危機だったと、いうことです…」
…では、その危機がなければ、どうだったのだろうか?…
あの水野透(とおる)は、好子さんでなく、私を選んだのだろうか?
米倉好子でなく、この高見ちづるを選んだのだろうか?
思わず、そう、思った…
だから、
「…だったら…」
と、つい、勢い勇んで、言ってしまった…
が、
それ以上は、言えなかった…
なんといっても、血の繋がりがないとはいえ、今、電話をしている相手の正造は、好子さんの兄…
その兄に、聞いていいことと、悪いことがあると、思ったのだ…
「…だったら、大日産業の業績が、悪化しなければ、透(とおる)は、好子でなく、高見さんと、結婚したのか? と言いたいのですか?…」
その通りだが、さすがに、それは、言えなかった(苦笑)…
さすがに、言っていいことと、悪いことがある…
だから、さすがに、それを、口にすることは、できなかった…
「…でも、それは、わかりません…」
「…わからない?…」
「…ボクは、透(とおる)では、ありませんから…」
正造が、笑った…
私は、
「…」
と、答えることが、できなかった…
たしかに、言われてみれば、その通り…
その通りだった…
今、電話している相手は、米倉正造…
水野透(とおる)ではない…
だから、当たり前だが、透(とおる)が、どう思うかは、わかるわけがなかった…
が、
やはりというか…
そんなことは、わかっているが、この際、ウソでも、いいから、
「…ホントは、透(とおる)は、高見さんと、結婚したかった…」
と、言って、もらいたかった…
ウソでも、いいから、
「…好子ではなく、高見さんを選びたかったと、思う…」
と、言ってもらいたかった…
正直、自分が、どれほど、透(とおる)を好きだったかと、問われれば、微妙…
返答に困る(苦笑)…
にもかかわらず、自分を、好きだと、言われたかった…
図々しいにもほどが、あるが、そう言われたかった(苦笑)…
これは、誰でも、同じ…
同じだ…
自分が、どれほど、その相手を好きではなくても、その相手に、自分を好きだと、言われるのは、嬉しいものだ…
だから、自分勝手極まりないが、
「…透(とおる)は、ホントは、高見さんが、好き…」
「…高見さんと、結婚したかった…」
と、言ってもらいたかった…
そして、そんなことを、考えていると、
「…結婚は、タイミングです…」
と、またも、正造が、繰り返した…
「…タイミング?…」
「…さっきも言った妊娠がいい例です…付き合っている彼女が、妊娠したから、結婚する…」
「…なにを、言いたいんですか?…」
「…どんなことも、タイミングだということです…」
「…」
「…そして、今、五井が、米倉を助けたのも、タイミングだということです…」
「…タイミング?…」
意味が、わからなかった…
五井が、米倉を助けることが、どうして、タイミングなのだろう?…
「…正造さん、それって、一体?…」
私が、言いかけると、正造が、いきなり、
「…スイマセン…ちょっと、ひとが、来たようです…今日は、これ以上は…」
と、言って、呆気なく、電話を切った…
明らかに、ミエミエのウソだった…
が、
私には、どうすることも、できなかった…
こんなとき、相手に、電話を切らないでくれと、懇願しても、無理…
切るときは、切る…
誰もが、そういうものだからだ(苦笑)…
そして、そんなことよりも、正造の言葉が、意味深過ぎた…
色々示唆するものが、あり過ぎた…
そもそも、あの秋穂という娘…
本当に、あの秋穂は、透(とおる)を、狙っているのだろうか?
ふと、思った…
あの秋穂という娘が、透(とおる)と、いい関係になっても、おかしいとは、思わない…
透(とおる)だって、三十歳を過ぎた男…
自分より、若い女と、男女の関係になっても、おかしくはない…
なにより、あの秋穂という娘は、キレイ…
そして、カワイイ…
何度も言うように、あの秋穂という娘は、私と、似たタイプの美人…
女優の常盤貴子さんの若い頃に、似ている美人だ…
そして、それを、思えば、あの米倉好子さんも、同じ…
透(とおる)と、結婚した、好子さんも、同じタイプの美人だ…
なにより、私と、好子さんは、姉妹と呼んでいいほど、似ている…
見ず知らずの人間が、私と好子さんを見れば、姉妹と間違えるほど、似ている…
つまりは、私と、好子さん、そして、あの秋穂という娘は、皆、似ている…
三人とも、女優の常盤貴子さんの若い頃に似ている…
そして、それを考えれば、これは、もしかしたら、透(とおる)の女の好みなのか?
そう、気付くと、思わず、吹き出しそうになった…
三人とも、同じタイプ…
同じような顔をした女…
つまりは、透(とおる)は、女優の常盤貴子さんの若い頃のようなタイプが、好きだと、言うことだ…
が、
ふと、気付いた…
これは、罠?
誰かが、仕組んだ罠?
元々、私が、米倉家に出入りしたのは、私が、好子さんに似ていたから…
女好きの、米倉家の先代当主、平造が、血の繋がってない、娘の好子さんを、狙っていると、思った、息子の正造が、いわば、好子さんの代わりに、私を、平造に与えようと、画策した…
好子さんを、平造から、守るためだ…
だから、そもそも、私が、好子さんと似ていなければ、私は、米倉の家に招かれることもなかった…
そして、あの秋穂だ…
彼女もまた、私と、好子さんと、同じタイプの美人…
だから、透(とおる)も、気を許したというか…
親しくなったということだ(笑)…
そして、それを、あのフライデーに撮られた…
フライデー=写真週刊誌に撮られた…
そして、それを、契機に、米倉と水野は、提携を解消した…
つまりは、あの写真を撮られなければ、水野と、米倉は、提携を、解消することは、なかったということだ…
私は、その事実に、気付いた…
今さらながら、気付いた…
が、
おそらく、それは、きっかけに、過ぎない…
きっと、水面下では、米倉との提携に、反対するものが、大勢、水野内部にいたに違いない…
あの水野家当主の水野良平は、一人息子の透(とおる)が、好子さんとの結婚を、懇願したから、仕方なく、透(とおる)と、好子さんの結婚を認めたが、水野家内では、反対の声も、大きかったに違いない…
傾きかけた米倉を救うためには、当たり前だが、水野は、米倉の負債を背負わなければ、ならない…
いわば、米倉の借金を肩代わりしなければ、ならない…
負債は、当初、想定していたときよりも、少なかったと言われるが、それでも、莫大な借金に違いない…
このご時世、あまりにも、莫大な借金を背負えば、水野とて、無傷では、すまない…
最悪、米倉と共倒れの恐れすら、ある…
だから、当初は、父親の水野良平も、猛反対した…
透(とおる)と、好子さんの結婚を、猛反対した…
透(とおる)が、好子さんと、結婚することは、水野が、米倉を救うことになるからだ…
そして、それは、危険過ぎた…
すでに説明したように、米倉と水野、双方の共倒れの危険があるからだ…
が、
これも、今、説明したように、米倉の負債は、当初、想定したよりも、大分、少なかった…
だから、水野良平は、透(とおる)と、好子さんの結婚を、許した…
共倒れの危険が、なくなったと思ったからだ…
が、
もし、それが、ウソだったら?
ふと、思った…
もし、それが、ウソだったら、どうする?
いや、
ウソとは、言えないが、間違いだったら、どうする?
つまりは、米倉は、ホントは、当初、思っていた通り、莫大な負債を抱えていた…
と、したら、どうする?
その可能性に気付いた…
「…透(とおる)ですよ…水野透(とおる)…」
「…透(とおる)さんが、どうかしましたか?…」
「…透(とおる)が、フライデーで、写真を撮られた相手は、秋穂ですよ…忘れたんですか? 高見さん…」
そうだ…
すっかり忘れていた…
たしかに、そうだった…
あの水野透(とおる)は、秋穂さんと、いるところを、写真に撮られた…
だから、大騒ぎになった…
なぜなら、水野透(とおる)は、すでに、米倉好子と結婚している…
しかも、二人の結婚は、ただの結婚ではない…
二人の結婚は、水野と米倉の提携の象徴…
二人が、結婚することで、水野と米倉は、提携し、やがて、合併する…
そのための結婚だった…
なにより、米倉は、水野なしでは、生きれない…
水野なしでは、生き残れない…
だから、二人の結婚は、米倉を救済するための結婚…
米倉の経営する大日産業が、苦境に陥り、破綻寸前になった…
その危機を回避するために、大日産業の莫大な負債を隠して、水野と提携した…
いわば、水野を騙して、米倉を救うために、利用したのだ…
それを知った水野家当主の水野良平は、激怒したが、結局は、息子の透(とおる)が、強引に、好子さんとの結婚を望んだから、その意を汲んで、結婚を認めた…
だから、普通に考えれば、二人は、簡単に別れることが、できないはずだった…
二人の離婚は、水野と米倉の提携の解消を意味する…
そしてそれは、同時に、米倉の…大日産業の破綻を意味する…
だから、離婚は、できないはずだった…
が、
離婚では、なかったが、透(とおる)の不倫が、発覚した…
不倫=浮気が、発覚した…
そして、それを契機に、水野と米倉の提携は、解消…
米倉は、路頭に迷うと思われたが、思いがけず、あの五井が、手を差し伸べた…
そういうことだった…
「…透(とおる)は、ホントは、高見さんが、好きだったんですよ…」
「…私が、好きだった?…」
「…そうです…」
「…でも、だったら、どうして、透(とおる)さんは、好子さんと結婚したんですか?…」
「…それは、好子も好きだって、ことです…」
「…好子さんも好き?…」
「…たぶん、透(とおる)は、高見さんも、好きだし、好子のことも、好きだったんだと、思います…二人とも、甲乙つけがたいほど、好きだったんだと、思います…」
「…だったら、どうして、透(とおる)さんは、好子さんと、結婚したんですか?…」
「…それは、たぶん…」
「…たぶん、なんですか?…」
「…米倉を…好子を救うためだったと、思います…」
「…好子さんを救うため?…」
「…あのままでは、間違いなく、米倉は、没落した…大日産業は、倒産…これは、逃れられなかった…」
「…」
「…そして、透(とおる)は、好子と、幼馴染(おさななじみ)です…幼い頃から、父親を通じて、米倉、水野、双方の屋敷に出入りしていた…だから、米倉の苦境を知って、透(とおる)は、好子を、放って、置けなかった…」
「…」
「…米倉が、没落することは、好子が、路頭に迷うこと…それを、見ないフリをすることが、透(とおる)には、できなかった…」
「…」
「…だから、透(とおる)は、高見さんではなく、好子と、結婚した…苦境に陥った米倉を助けることで、好子を救おうとした…」
そんなことが…
そんなことが、あったとは?
まったく、気付かなかった…
だから、透(とおる)は、好子さんを、選んだ…
私、高見ちづるではなく、好子さんを選んだ…
そういうことだったのか?
私は、思った…
すると、
「…結婚は、タイミングですよ…」
と、電話の向こう側から、正造が、告げた…
「…タイミング?…」
「…そうです…付き合っている女が、妊娠したのを、契機に、結婚するのは、世の中には、ありふれています…それが、透(とおる)にとっては、米倉の危機だったと、いうことです…」
…では、その危機がなければ、どうだったのだろうか?…
あの水野透(とおる)は、好子さんでなく、私を選んだのだろうか?
米倉好子でなく、この高見ちづるを選んだのだろうか?
思わず、そう、思った…
だから、
「…だったら…」
と、つい、勢い勇んで、言ってしまった…
が、
それ以上は、言えなかった…
なんといっても、血の繋がりがないとはいえ、今、電話をしている相手の正造は、好子さんの兄…
その兄に、聞いていいことと、悪いことがあると、思ったのだ…
「…だったら、大日産業の業績が、悪化しなければ、透(とおる)は、好子でなく、高見さんと、結婚したのか? と言いたいのですか?…」
その通りだが、さすがに、それは、言えなかった(苦笑)…
さすがに、言っていいことと、悪いことがある…
だから、さすがに、それを、口にすることは、できなかった…
「…でも、それは、わかりません…」
「…わからない?…」
「…ボクは、透(とおる)では、ありませんから…」
正造が、笑った…
私は、
「…」
と、答えることが、できなかった…
たしかに、言われてみれば、その通り…
その通りだった…
今、電話している相手は、米倉正造…
水野透(とおる)ではない…
だから、当たり前だが、透(とおる)が、どう思うかは、わかるわけがなかった…
が、
やはりというか…
そんなことは、わかっているが、この際、ウソでも、いいから、
「…ホントは、透(とおる)は、高見さんと、結婚したかった…」
と、言って、もらいたかった…
ウソでも、いいから、
「…好子ではなく、高見さんを選びたかったと、思う…」
と、言ってもらいたかった…
正直、自分が、どれほど、透(とおる)を好きだったかと、問われれば、微妙…
返答に困る(苦笑)…
にもかかわらず、自分を、好きだと、言われたかった…
図々しいにもほどが、あるが、そう言われたかった(苦笑)…
これは、誰でも、同じ…
同じだ…
自分が、どれほど、その相手を好きではなくても、その相手に、自分を好きだと、言われるのは、嬉しいものだ…
だから、自分勝手極まりないが、
「…透(とおる)は、ホントは、高見さんが、好き…」
「…高見さんと、結婚したかった…」
と、言ってもらいたかった…
そして、そんなことを、考えていると、
「…結婚は、タイミングです…」
と、またも、正造が、繰り返した…
「…タイミング?…」
「…さっきも言った妊娠がいい例です…付き合っている彼女が、妊娠したから、結婚する…」
「…なにを、言いたいんですか?…」
「…どんなことも、タイミングだということです…」
「…」
「…そして、今、五井が、米倉を助けたのも、タイミングだということです…」
「…タイミング?…」
意味が、わからなかった…
五井が、米倉を助けることが、どうして、タイミングなのだろう?…
「…正造さん、それって、一体?…」
私が、言いかけると、正造が、いきなり、
「…スイマセン…ちょっと、ひとが、来たようです…今日は、これ以上は…」
と、言って、呆気なく、電話を切った…
明らかに、ミエミエのウソだった…
が、
私には、どうすることも、できなかった…
こんなとき、相手に、電話を切らないでくれと、懇願しても、無理…
切るときは、切る…
誰もが、そういうものだからだ(苦笑)…
そして、そんなことよりも、正造の言葉が、意味深過ぎた…
色々示唆するものが、あり過ぎた…
そもそも、あの秋穂という娘…
本当に、あの秋穂は、透(とおる)を、狙っているのだろうか?
ふと、思った…
あの秋穂という娘が、透(とおる)と、いい関係になっても、おかしいとは、思わない…
透(とおる)だって、三十歳を過ぎた男…
自分より、若い女と、男女の関係になっても、おかしくはない…
なにより、あの秋穂という娘は、キレイ…
そして、カワイイ…
何度も言うように、あの秋穂という娘は、私と、似たタイプの美人…
女優の常盤貴子さんの若い頃に、似ている美人だ…
そして、それを、思えば、あの米倉好子さんも、同じ…
透(とおる)と、結婚した、好子さんも、同じタイプの美人だ…
なにより、私と、好子さんは、姉妹と呼んでいいほど、似ている…
見ず知らずの人間が、私と好子さんを見れば、姉妹と間違えるほど、似ている…
つまりは、私と、好子さん、そして、あの秋穂という娘は、皆、似ている…
三人とも、女優の常盤貴子さんの若い頃に似ている…
そして、それを考えれば、これは、もしかしたら、透(とおる)の女の好みなのか?
そう、気付くと、思わず、吹き出しそうになった…
三人とも、同じタイプ…
同じような顔をした女…
つまりは、透(とおる)は、女優の常盤貴子さんの若い頃のようなタイプが、好きだと、言うことだ…
が、
ふと、気付いた…
これは、罠?
誰かが、仕組んだ罠?
元々、私が、米倉家に出入りしたのは、私が、好子さんに似ていたから…
女好きの、米倉家の先代当主、平造が、血の繋がってない、娘の好子さんを、狙っていると、思った、息子の正造が、いわば、好子さんの代わりに、私を、平造に与えようと、画策した…
好子さんを、平造から、守るためだ…
だから、そもそも、私が、好子さんと似ていなければ、私は、米倉の家に招かれることもなかった…
そして、あの秋穂だ…
彼女もまた、私と、好子さんと、同じタイプの美人…
だから、透(とおる)も、気を許したというか…
親しくなったということだ(笑)…
そして、それを、あのフライデーに撮られた…
フライデー=写真週刊誌に撮られた…
そして、それを、契機に、米倉と水野は、提携を解消した…
つまりは、あの写真を撮られなければ、水野と、米倉は、提携を、解消することは、なかったということだ…
私は、その事実に、気付いた…
今さらながら、気付いた…
が、
おそらく、それは、きっかけに、過ぎない…
きっと、水面下では、米倉との提携に、反対するものが、大勢、水野内部にいたに違いない…
あの水野家当主の水野良平は、一人息子の透(とおる)が、好子さんとの結婚を、懇願したから、仕方なく、透(とおる)と、好子さんの結婚を認めたが、水野家内では、反対の声も、大きかったに違いない…
傾きかけた米倉を救うためには、当たり前だが、水野は、米倉の負債を背負わなければ、ならない…
いわば、米倉の借金を肩代わりしなければ、ならない…
負債は、当初、想定していたときよりも、少なかったと言われるが、それでも、莫大な借金に違いない…
このご時世、あまりにも、莫大な借金を背負えば、水野とて、無傷では、すまない…
最悪、米倉と共倒れの恐れすら、ある…
だから、当初は、父親の水野良平も、猛反対した…
透(とおる)と、好子さんの結婚を、猛反対した…
透(とおる)が、好子さんと、結婚することは、水野が、米倉を救うことになるからだ…
そして、それは、危険過ぎた…
すでに説明したように、米倉と水野、双方の共倒れの危険があるからだ…
が、
これも、今、説明したように、米倉の負債は、当初、想定したよりも、大分、少なかった…
だから、水野良平は、透(とおる)と、好子さんの結婚を、許した…
共倒れの危険が、なくなったと思ったからだ…
が、
もし、それが、ウソだったら?
ふと、思った…
もし、それが、ウソだったら、どうする?
いや、
ウソとは、言えないが、間違いだったら、どうする?
つまりは、米倉は、ホントは、当初、思っていた通り、莫大な負債を抱えていた…
と、したら、どうする?
その可能性に気付いた…