第7話

文字数 4,223文字

 彼女の影響は、大きかった…

 私は、あらためて、思った…

 っていうか、彼女を見て、見知らぬ相手と、付き合う危険を考えたというか…

 たいして、知りもしないのに、付き合ったり、結婚したりする、危険を考えた…

 昔から、良く言われるのが、男女が、知り合うのは、3つだけ…

 会社=職場、

 学校、

 友達の紹介…

 この3つだけだと、言われている…

 そして、それは、正しいというか…

 安心できる…

 会社や、学校で、知り合えば、その人間が、どういう人間か、身近に、接することで、わかるから、安心できる…

 また、信頼できる友人からの紹介ならば、変な人間を紹介される危険もないから、安心できる…

 だから、今のように、簡単に、スマホのマッチングアプリで、知り合うのは、危険…

 どんな人間か、わからないからだ…

 さっき例に挙げた彼女の場合は、会社で、相手と知り合ったが、部署が、違う…

 職場が、違う…

 だから、互いが、どんな人間か、よく、わからないから、付き合った…

 そういうことだ…

 だから、それは、マッチングアプリと似ている…

 会社は、同じでも、職場が違う…

 だから、どんな人間か、わからない…

 そして、誰もが、少々、付き合ったぐらいでは、相手が、どんな人間かは、わからない…

 例えば、付き合っていると言っても、会うのは、月に、一回か、二回だけ…

 カラダの関係はあるかもしれないが、その程度の頻度での付き合いでは、互いに、どんな人間かは、わからない…

 互いをよく知るには、いっしょに暮らすのが、一番…

 一番、わかる…

 どんな人間か、わかる…

 だから、以前、例に挙げた、会社の男が、いつも、たわいもない、おしゃべりをしている女子社員を評して、

 「…オレも、どんなひとか、よく知らないんだよね…」

 と、言ったのは、よくわかるというか…

 会社で、軽く雑談をしているぐらいの間柄では、その人間が、本当は、どんな人間か、わからないからだ…

 そして、以前も、言ったように、その男は、若いが、すでに妻帯者だった…

 すでに、結婚していた…

 だから、結婚した妻とは、付き合っていたときにわからなかったことが、結婚して、わかったということが、少なからず、あるに違いない…

 そう、思った…

 そして、そんなことを、考えると、つくづく、結婚相手を見極める危険というか…

 結婚相手を見極めることは、大変だと、思った…

 そして、それは、歳を取れば、取るほど、誰もが、思い、慎重になる…

 そして、慎重になれば、なるほど、恋はできない…

 結婚は、できない…

 相手を選ぶことに、躊躇うからだ…

 だから、仕方なくと、言えば、語弊があるが、

 …結婚は、勢い…

 と、断言する人間が、男女ともに、一定数いるのは、わかる気がする…

 考え過ぎれば、なにも、できないからだ…

 誰もが、歳を取れば、取るほど、慎重になり、用心深くなる…

 あまり、頭が、良くない人間でも、多少は、良くなる(笑)…

 だから、さっき例に挙げた、まったくの平凡な人間にも、かかわらず、自己評価の高い女と、結婚した男でも、おそらく十年後には、同じような行動は、とるまい…

 例えば、その彼女と知り合っても、すぐには、深い仲には、ならないとか…

 下手に結婚に持ち込まれては、たまらないから、少しは、時間をかけて、どんな人間か、観察するだろう…

 ひとの悪口ばかり言う人間は、同じ…

 会社でも、学校でも、いつでも、どこでも、誰かの悪口を言う…

 歳を取り、周囲の目が、少々気になりだしたら、周囲の目のつかない家庭や、気心の知れた仲間内で、悪口を言うだろう…

 さすがに、会社=職場で、いつでも、他人の悪口ばかり言っていては、自分が、どう周囲に見られるか、少しは、考えるように、なるからだ…

 が、

 おそらく、人間は、変わらない…

 その人間の本質は、変わらない…

 同じだろう…

 私は、短期間だが、大学時代の夏休みに、その会社で、バイトして、そんな人間を目の当たりにしたことで、少々、いや、かなり考えさせられることになった(苦笑)…

 なにより、気安く、他人と付き合う危険を教えてくれたのが、彼女だった…

 彼女と付き合った男には、仰天したが、やはりというか…

 その後、離婚したと聞いて、当たり前だと、思った…

 いつでも、どこでも、ひとの悪口ばかり言っている人間を好きになる人間は、いない…

 当たり前のことだ(笑)…

 そして、何度もいうが、彼女は、私の半面教師だった…

 なにも、知らないで、彼女と結婚する危険を教えてくれた…

 この場合、男女は、関係ない…

 偶然、知り合った相手と、よくわかりもしないまま、結婚する危険を教えてくれた…

 が、

 その反動か…

 私の婚期が、遅れた(笑)…

 元々、恋に消極的というか…

 あまり、他人に心を動かすことのない、私が、さらに慎重になった…

 まあ、彼女のせいばかりというのではないが、私に影響を与えたのは、確か…

 確かだ…

 少なからず、影響を与えた…

 なにより、結婚に関わらず、自分自身の評価という点で、驚きだった…

 まったくの平凡な人物にも、かかわらず、自己評価が、異常に高かったからだ(笑)…

 そして、そんな人間は、ごく稀に世の中にいる…

 そして、それは、なぜかと、当時、考えた…

 気付いたのは、環境だった…

 例えば、女の少ない職場にいれば、若ければ、人並みのルックスであれば、男に、モテる…

 当たり前のことだ…

 また、いつも、他人の悪口ばかり言っていても、誰も注意をしなければ、それが、普通になる…

 それも、当たり前…

 つまり、環境だ…

 また、仕事もそう…

 勉強ではないのだから、同じ職場にいても、皆、同じ仕事をしているわけではない…

 だから、ハッキリ言えば、誰が、本当に、優れているのか、わからない…

 これが、学校ならば、同じクラスであれば、試験をすれば、誰々が、一番で、誰々が、二番だということは、わかる…

 同じ試験で、点数を競うからだ…

 が、

 仕事は、違う…

 誰もが、同じ仕事をするわけではないし、得手不得手もある…

 勉強でいえば、英語は得意だが、数学は、苦手…

 だが、自分が、与えられた仕事が、数学と同じ苦手な仕事を与えられては、成果も出ない…

 惨めなまでに出ない…

 そういうことだ(笑)…

 が、

 会社は、すぐに、職場を変えてはくれない…

 だから、ある程度の期間は、ずっと、その苦手な仕事をやり続けるしか、なくなる…

 いわゆる日本を代表するような伝統的な企業ほど、中身は、硬直的というか…

 ハッキリ言って、時代遅れの場合が、多い(笑)…

 だから、自分に合わない仕事をさせられ、退職する人間が、後を絶たないというか…

 せっかく、ひとを採用しても、辞めて行く人間が、後を絶たない(笑)…

 この歳になって、振り返って見ると、学生時代に、そんな経験をして、良かったと、心の底から、思う…

 職場といっても、バイトに、過ぎないが、それでも、経験するのと、しないのでは、違う…

 いくつかの職場を経験したのは、実に有意義だった…

 役に立った…

 さっき、例に挙げた、ひとの悪口ばかり、言っている女性がいた職場などは、私が、経験した職場では、文字通り、最低の職場だった(笑)…

 が、

 例えば、その職場しか、知らなければ、その職場の雰囲気が、おかしいと、思っていても、気にしないというか(笑)…

 いや、

 おかしいのは、わかっているが、おそらく、どれほど、おかしいのか、わからない…

 なぜなら、他の職場=会社を知らないからだ…

 私は、当時、そう、思った…

 現に、その職場で、陰で、その職場の雰囲気に、嘆いている若い男に、

 「…どこに、行っても、同じだよ…」

 と、慰めている上司の男の姿を見たことがある…

 私は、当時、その上司の男が、本気で、言っているのか、訝った…

 誰が、考えても、他人の悪口ばかり言う女性が、いる職場など、あり得ないからだ…

 が、

 今、思えば、私は、その上司の男は、本気で、言ったのだろうと、思う…

 なぜなら、その企業は、日本を代表する企業だったからだ…

 そんな立派な企業で、そんな他人の悪口ばかり言う女性を採用したのは、どうか? と、思うが、事実だった…

 いや、

 真逆に、考えれば、大企業だからかも、しれない…

 今は、そう思う…

 採用する人間が、多いから、つい、採用してしまう…

 正社員でなくても、派遣や契約社員で、入社してしまう…

 いや、

 入社できてしまう…

 私が、学生時代に、バイトをした他の企業や、他の職場の中では、そのひとの悪口ばかり言う女性がいた企業ほど、大きな企業は、なかった…

 だから、採用して、しまったのだろう…

 むしろ、他の企業の方が、ひとのレベルが高かった…

 つまり、大きな企業ではなかったほうが、ひとのレベルが高かった…

 それは、なぜか? と、当時、考えた…

 要するに、採用する人間が、少ないからだった…

 仮に採用しても、同じように、ひとの悪口ばかり言う人間は、集まらない…

 が、

 大きな企業では、集まる可能性が高い…

 採用するひとが、多いからだ…

 だから、他の企業で、そんな人間は、会ったことがなかった…

 なにより、当たり前だが、職場で、他人の悪口ばかり言える雰囲気の職場は、普通はない…

 たとえ、その女性でも、他の職場で、他人の悪口を言えない雰囲気の職場では、悪口は、言えないだろう…

 そして、仲間…

 同じように、ひとの悪口ばかり言う仲間がいるから、安心して、ひとの悪口ばかり、言うことができる…

 だから、真逆に、言えば、他人の悪口ばかり言う仲間も、その仲間が、いなくなれば、他人の悪口は、言わなくなるだろう…

 いや、

 言えなくなるだろう…

 誰もが、職場で、ひとりで、他人の悪口を言っている人間は、いない…

 当たり前のことだ…

 私は、当時、そんなことを、思った…

 私は、当時、そんなことを、考えた…

 そして、その経験が、生きたというと、大げさだが、役に立った…

 なにより、他人を評価することが、できるようになったというか…

 他人を評価する基準が、できたと言った方が、よかったのかもしれない…

 世の中には、いろいろな人間がいる…

 それが、わかったのが、よかったのかも、しれない…

 ただ、関わりたくは、なかった…

 二度と、関わりたくは、なかった…

 当たり前のことだった(笑)…

               
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