よく当たるおみくじ

文字数 1,069文字

 はたして、これを怪談と呼んでいいかはわからない。だが、聞いてもらいたい。
 また引いちゃったわけですよ、おみくじの「凶」を……。
 ――といわれてもほとんどの方はなにを言っているかわからないかもしれないし、以前からここを訪れていただいている方々からは「またその話かよ!」と叱責を受けるかもしれないので、詳細は実話怪談「続・初日の出」のほうにて。
 ともあれ――。
 じつは先週末から今週の頭にかけて、毎年恒例の夏登山に行っていたおれ。
 場所は青梅にある某修験道のメッカなので、どちらかというと「登山」というより「山ハイキング」といったほうが正確なのかもしれないが、なんにせよこの十数年来のおれの年中行事には正月と遅めに取る夏休みの二回、ここの山頂にある神社へのお参りがルーティンワークとして組み込まれている。
 そしてご存じの方はご存知のように今年の正月、おれは毎年運試しをしているおみくじに挑戦して、十数年目にして見事に初の「凶」を引き当てた。
 それからこっち、人生史上〝例にないほど洒落にならない凶事〟に見舞われつづけているのは、すでにご報告した通りである。
 なので本当は禁じ手なのだろうが、今回は初めて正月以外でおみくじを引いてみた。
 あわよくば、「運勢がうわがきできるのでは?」と思ったからだ。
 ……ところが結果は、以下に添付した画像の通り。もちろん正月以降、今年は一度もおみくじを引いていないので、通算して二連続での「凶」である。
 や、いくらなんでもそれ高確率すぎない?
 しかもこれ引き直した分、内容がもっと具体的になってるんだよね。
「将来自分の居場所を失う災いがある」って最後のくだりなんか、年始に親父がぶっ倒れてマンション経営と借金返済を押しつけられた身としては、マジで洒落になってない。
 目一杯へこみながら戻った宿坊でこっそり女将さんに相談してみても、「う~ん、いくらなんでも、おみくじでそんなに具体的なことは書かないはずなんだけど……」と首をひねるばかり。でも、ちゃんとここにそう書いてあるからね。
 やっぱり不埒なことを考えると、ちゃんと神様は見ていらっしゃるんだなって。
 ……くわばら、くわばら。
#実話怪談 #体験談 #ショートショート


二〇二〇年一月一日 山頂の神社にて


二〇二〇年八月三〇日 山頂に神社にて


ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み