群馬の話 25

文字数 687文字

 そして引っ越しを決心したおれは、おそるおそる実家に電話を入れる。つぎのアパートに引っ越すにしても保証人は必要だし、なにより先立つものがなかったからね。
 すると電話口のお袋が、
「そうだね、そうしなさい。それでいつ引っ越しするの?」
 お化けが出るから、なんて白状できないおれはなにも理由を話していないのに、むちゃくちゃ心配そうにそう言ってきた。
 正直けんもほろろにあしらわれると思ってたおれは、ちょっと拍子したくらいだ。
 ともあれ――。
 その反応は反応で気にはなったし、親父を納得させるのにも一悶着あったけど、いちいち説明するとまた長くなるからはしょって話を先へ。
「やっぱり通学に不便だから、もっと大学のそばのアパートにしたい」
 って強引な理由で、あっけなく引っ越しが決まったことだけはつけたしておく。
 ――で、なんだかんだで引っ越しの前日。
 今度はどうしても手伝うって聞かないお袋をむかえて、ぱっぱと夜逃げでもするみたいに荷づくりをはじめるおれ。
 大家さんの反応は、「ああ、やっぱり……」みたいだったし、今度はちゃんと挨拶しに行ったお隣のお姉さんも、「それがいいかもねぇ」って反応だった。
 そんなこんなで授業をさぼって急な引っ越し支度をしていたわけだけど、どうしてもサボれない必須科目があったおれは、引っ越し作業をお袋に任せて一時離脱する。
 だけど、またここでちょっとおかしなことが起こった。
 ――郡馬の話 26へ。
#実話怪談 #体験談 #わりと長編




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