わらしの宿

文字数 557文字

 おや、お客さん。こんな夜更けにどうしました?
 ふんふん――ああ、二階の足音がうるさくて眠れないと。こりゃ、あいすみません。すぐ代わりの部屋を用意するんで、どうぞそちらへ。
 ……うん? あれは子供の足音じゃあないのかって?
 へぇへぇ、お察しの通りで。毎晩、ってわけでもないんですが、たまーにこの時間帯になると、気まぐれにこんないたずらをはじめるんでございますよ。
 あはは、とんでもない。座敷わらしなんて気の利いたもんじゃありません。
 れっきとした、うちの悪ガキどもで。
 いやがる近隣のおなご衆にむりやり悪さしたり、里のモンに大ケガさしちまったりと、いくら親でも目に余るんで、はずかしながら閉じこめてある次第です。
 といっても――。
 出入り口だ窓だを漆喰でがっちり塗り固めて、もう八年もあかずの間にしてあるんですが、往生際の悪いモンですなぁ……。
 憎まれっ子世にはばかるたぁ、まさにこのことでして、へぇ。
 あたしらも心底から困ってる次第ですが――とと、さ、新しいお部屋につきましたよ。ここなら悪ガキどもが騒ぐ音も聞こえませんで、どうぞ朝までごゆっくり。
 そんじゃあ、おやすみなさいませ。
#ホラーポエム



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