群馬の話 9

文字数 670文字

 そしてYが泊まりに来てくれたその晩、おれたちは部屋に明かりをつけたままにして酒盛りを始めた。誰かがいてくれるから少しは安心できてたけど、おれの心境としては、とても素面のままじゃいられなかったからね。
「お化けとか、マジで出てくんの?」
「音だけなんだけど、マジで出てくんだって!」
「それ、隣の部屋の音が聞こえてくるだけなんじゃね?」
 へらへら笑いながらYのやつは、そのときまだまだ半信半疑だった。
 ……そうこうして、小一時間。
 ビールとか焼酎とか飲みながら、深夜零時は軽くまわったと思う。でもそんなときに限って、待てど暮らせどいっこうに怪現象が起こる気配はない。
「もしかして、電気ついてるとダメなんじゃね?」
 と、ベロベロに酔ったY。
 けっこう飲んだわりにあんまり酔えなかったおれは「ああ、たしかにそうかも……」と思って、とりあえず来客用の寝袋を出して、ちゃぶ台をたたんでYに寝床を作ってやった。
 なんにしろ、「この部屋でするおかしな体験」をYにもしてもらわんことには、解決策を相談するにも話にならんしね。
 で――。
 バタバタと寝床を作り終わって、電気を消してふたりとも横になってから待つこと三十分(くらいだったと思う)。
 ごろ寝しながらおれたちがひそひそ話をしていると、Yのやつのテキトーきわまりない予想の通り、台所から例の洗い物をする奇妙な音が聞こえてきた。
 ――群馬の話10へ。
#実話怪談 #体験談 #わりと長編




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