ようかいポスト

文字数 465文字

 郵便局に向かって歩いていると、歩道の真ん中に首が落ちていた。
 ギョッとした私は思わず、まだ生暖かいその首をひろいあげる。若くて美しい、どこか愁いを帯びた女の子の生首だ。
 そして、つぎの曲がり角には右腕が……。
 そのつぎの角には、左足が……。
 胸、胴、腰、と角を曲がるたびに女の子の部位は増えてゆき、郵便局にたどり着く直前には、ついに白くてなまめかしい右足をひろいあげる。
 その頃になると、私は女の子のパーツをすべて揃えてみたくなっていた。
 ――おかしいぞ、じゃあ左腕はどこに?
 そんなことを考えながらふと顔を上げると、郵便ポストの投函口からひらひらと女の子の左腕が手まねきをする。
 あぁ、なんだ、そんなところに――。
 けれど手を伸ばした瞬間、左腕はスルスルと私ごとポストに吸い込まれていった。
 ガリガリ、ゴリゴリ、ガリガリ、ゴリリ。
 消化された真っ赤な胃袋の中で、私と彼女は混然一体となってゆく。
#ホラーポエム




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