マッチポンプ

文字数 405文字

 自分で押して、自分であげる。
 ひまなやつもいるもんだなぁと辺りを眺めていると、文豪きどりの猿は寝不足の目を血走らせながらこう言った。
「まじめにルールを守るなんて、馬鹿のすることですよ」
 カチカチ、カチカチ……。
 自慰行為をおぼえた猿は、どうやら暴走するものらしい。その滑稽な音は、クリックの音なのか剥きだした歯の鳴る音なのかすら、もはや判然としない。
 カチカチ、カチカチ、カチカチ、カチカチ……。
 むなしく暗がりにひびく打鍵音を聞きながら、ああ、きっともうこいつらは駄目だな……と、私は机に向きなおった。
 それでもあきることなく永遠に、互いをむさぼる猿の宴はつづくのだろう。
 カチカチ、カチカチ、カチカチカチカチカチ……。
 暗がりのどこかで、キキーッとヒステリックな叫び声がした。
#ホラーポエム




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