なんかいですか
文字数 518文字
いつもどおりエレベーターのボタンを押すと、先客がひとり乗っていた。
真っ白なワンピースを着た、青白い顔の陰気な女性だ。
「……なんかいですか?」
そう聞かれたので、五階をお願いしますというと、
「……なんかいですか?」
と、もう一度おなじことを聞かれる。
少し気味悪くなってだまりこくっていると、女性はエレベーターのボタンに指を置いたまま早口でくり返す。
「なんかいですかなんかいですかなんかいですかなんかいですか……」
あまりの恐怖で私の身がすくんだとき、女性がくるりと首だけでふりむいた。
「……わたしが死んだのは、なんかいですか?」
あとのことはもう、よくおぼえていない。
私は女性を押しのけてエレベーターを飛びだすと、夢中で階段を駆けあがって自分の部屋へと飛びこんでいた。
このマンションではときおり、こんな女性が目撃されるという。
女性はむかし、失恋を苦にしてマンションの屋上から身を投げたのだそうだ。きっとそれから、ずっとおなじことをくり返しているのだろう。
そう、なんかいもなんかいも……。
#ホラーポエム
真っ白なワンピースを着た、青白い顔の陰気な女性だ。
「……なんかいですか?」
そう聞かれたので、五階をお願いしますというと、
「……なんかいですか?」
と、もう一度おなじことを聞かれる。
少し気味悪くなってだまりこくっていると、女性はエレベーターのボタンに指を置いたまま早口でくり返す。
「なんかいですかなんかいですかなんかいですかなんかいですか……」
あまりの恐怖で私の身がすくんだとき、女性がくるりと首だけでふりむいた。
「……わたしが死んだのは、なんかいですか?」
あとのことはもう、よくおぼえていない。
私は女性を押しのけてエレベーターを飛びだすと、夢中で階段を駆けあがって自分の部屋へと飛びこんでいた。
このマンションではときおり、こんな女性が目撃されるという。
女性はむかし、失恋を苦にしてマンションの屋上から身を投げたのだそうだ。きっとそれから、ずっとおなじことをくり返しているのだろう。
そう、なんかいもなんかいも……。
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