河童狂

文字数 354文字

 雌河童、というひびきに劣情をもよおすのは、果たして私だけだろうか?
 いや、かつてどの時間帯でもテレビから垂れ流されていた、あのなつかしいCMを見たことがあるものなら、だれでもいだく共通の感傷ではないのだろうか。
 ――あの、ほのかな郷愁と淫靡をさそう湿った肌にふれてみたい。
 それは男のいだく憐れな妄想であり、同時に「女性」という異種族に対する畏敬と、ひそかな征服欲の入り混じったはしたない蔑視であるにちがいない。
 今日もそんなやましい思いを胸に、この滝つぼの前に立つ。
 背後の水だまりのなかで、ぽちゃんとなにかが飛びこむ水音がした。
 ああ、私はいつになったら彼女に会えるのだろう……。
#ホラーポエム




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