家内食堂

文字数 422文字

 うん、この味この味。こーゆーのが食べたかったんだよ。
 ……おふくろの味、っていうのかな?
 飾らないけど素朴で手が込んでて、どこかほっとする懐かしい味だ。
 まあ、うちのおふくろっていうのは、ずいぶんとクチうるさい人で――ぼくの顔をみれば勉強しろ勉強しろ、おやじの顔をみれば稼ぎがすくないって、すぐなじり飛ばすような嫌なオンナだったんだけどね?
 でもあのころ食べつづけてたこの味だけは、絶品だったなぁ……。
 ――え、それでおふくろはどうしたのかって?
 それがある日、夫婦ゲンカでカッとなったおやじがうっかり。おかげでぼくとおやじは後始末のために、それからぐんぐんと料理の腕があがったものさ。
 そうそう、そういえば大将の奥方も、だいぶクチうるさいタイプだったみたいだね。
 なるほどなぁ、それでこの味ってわけか……うんうん。
#ホラーポエム




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