群馬の話 3

文字数 478文字

 カチャカチャ……カチャカチャ……。
 瀬戸物がふれあうような微かな音で目を覚ますと、部屋の中はもう真っ暗だった。当時からズボラだったおれは腕時計以外の時計はもっておらず、時間はたしかめようがなったが真夜中なのは間違いなかった。
 この腕時計しかない――ってのは、のちのち重要なポイントになるので覚えておいてほしい。
 ……携帯電話?
 そんな便利なもんは、まだ出まわってないころの話なんよ。
 で、寝酒を決めてから高いびきで寝入っていたおれは、まだぼんやりとしかまわらない頭で音のもとを懸命に探ろうとした。音は間仕切りドアをへだてた向こう側、台所のほうから聞こえてくるみたいだった。
 たぶんこれ、洗い物してる音だ。
 とはいえ、台所だって真っ暗だし、第一ひとり暮らしを始めたんだからおれ以外の人間がこの部屋にいるわけがない。
 ゾッとして身震いすると、今度はベッドのすぐわきの床からズリっと音がした。
 ――群馬の話4へ。
#実話怪談 #体験談 #わりと長編




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