群馬の話 15

文字数 706文字

 そんなこんなで半月がすぎ、だんだん飽きてきたらしいYは、「お隣さんも、悪いもんじゃないって言ってたじゃん」
 そう言って、おれのアパートから引き上げていくことになった。
 じつを言えばその間、おれたちは洗い物の音だけじゃなくカーペットを這う音と女の人の気配もいろいろと実験を試みていて、
「おお、ほんとだ! 俺のまわりまわってるよ!」
 とか、最初のうちはYもまだ怪現象を楽しんで(?)はいたみたいだけど。
 で、そのころのおれはというと、いろいろ試してみた結果けっこう怪現象にも慣れて耐性ができていて、「まあ、たしかにたいした実害があるわけじゃないしなぁ……」くらいには思えるようになってきていた。
 Yと実験してみてわかったことは――

1、音はおれのほかに誰かいても、だいたい零時すぎくらいに始まる。
2、洗い物の音も這いずり音も、電気をつけていればしない。気配もない。
3、常夜灯(あの橙色のやつ)だと、音も気配もしたりしなかったりそのときどき。
4、息を吹きかるようないたずらは、たまにしかしてこない。
5、直接いたずらされるのは、ほかに誰かいたとしてもかならずおれ。

 ということくらい。
 とはいえ、これだけわかれば対処のしようもある。いざとなれば電気をつけっぱなしで寝ればいいし、実際におれはしばらくそうしていた。
 常夜灯はNG。うっすら部屋の中の様子が見えるから、逆にお化け屋敷みたいでなにか起きなくてもやっぱり不気味だったからね。
 ――群馬の話 16へ。
#実話怪談 #体験談 #わりと長編




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