群馬の話 24

文字数 532文字

「Yのやつ、自転車で事故って大けがしたってよ」
「……は?」
 むちゃくちゃ深刻な顔で告げてくる友人の言葉に、おれは愕然とした。
 幽霊の実験につきあってくれた、あのYが……?
 ちょっと待て、たしかにYの移動の足はたいがい自転車だけど、あいつの自転車ただのママチャリだぞ? 単独事故で大けがなんかすることあるか?
 泡を食ったおれがYの家に電話をしてみると、Yのお袋さんが怪我の状況を教えてくれた。なんでもバイトの遅番の帰り道、Yは前方不注意でガードレールに突っ込み、そのまま投げ出されて頭を六針ほど縫ったそうだ。
「血だらけで帰ってきたときはびっくりしたけど、本当はたいしたことないのよ。本人もピンピンしてるし。ほほほ――」
 そう告げるYのお袋さんの言葉に、ほっと胸をなで下ろすおれ。
 が、Yのお袋さんは、最後にこうつけたした。
「でも、変なの。あの子、『人魂を見て気を取られたら、自転車が勝手に突っ込んだ』ですって……おかしな子よねぇ」
 その話を聞いておれは、すぐにいま部屋を引っ越す決意をした。
 ――群馬の話 25へ。
#実話怪談 #体験談 #わりと長編




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