ぼっち布団

文字数 433文字

 誰もいないはずの場所からなにか出てくるのも怖いが、出なければおかしいものが出ない、というのもそれはそれで……。というのもここ数ヶ月、トイレにいっても出るはずのものが出ないのだ。大きいほうも小さいほうも、ずっと。
「……さすがにこれ、医者に診せたほうがいいよな?」
 やっと決心して重い腰をあげると、私はうすぼんやりとした記憶をたぐってみる。
 もし病院で、「なにか思い当たることは?」と質問されたときのためだ。
 急な体調変化は、ほかになかったのか? 何時に寝て、朝起きてなにを食べたのか? おかしなものを食べたりしなかったか?
 ……ん? 待てよ?
 そこまで考えて、ギクリとして茫然と立ち尽くす。
 おかしなものどころか、およそ食物というものを、ここしばらく取った覚えがない。最後に食事をしたのは、いつだったろうか?
 ゾッとして寝室に駆け込むと、敷きっぱなしにした万年床の上には、どろどろに溶けた〝かつて私だったもの〟の、赤黒いシミがべっとりと染みついていた。
#ホラーポエム



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