群馬の話 12

文字数 618文字

 結局、その日はYが少し興奮してたのもあって、また飲みながら朝を待った。
 ちなみに補足しておくと、隣の部屋は物音も人の気配もなかったし、当たり前だけどうちの台所にある洗い物(飲んでたときの)は、音がしてただけで洗われてはいなかった。
 そして朝になって、大学の入学式前日。
 とりあえず朝飯でも買いに行こうってことになって、駅の近くで見かけたコンビニまでだらだらと歩くおれとY。
 もちろん道中の話題は「あの洗い物の音をどう合理的に説明するか?」ってことなんだけど、出てきたのは「排水管をつたわって違う階の音が」とか、台所の向かい側……つまり「トイレ兼のユニットバスの側にある部屋の音が反響して」とか、大方の想像の範疇を越えないありきたりのものばかりだった。
 で、それよりもわりと大事なのがその帰り道。というか、帰ってきた玄関前。
 まだあーでもないこーでもない言いながら帰ってきたおれたちは、ちょうど帰宅したところらしいお隣さんと偶然に鉢合わせすることになる。
 お隣さんは当時の俺たちよりもちょっとお姉さん(アラサーくらいだったと思うから、お姉さんね)な妙齢の女性で、疲れた感じで部屋の鍵を開けているところだった。
 時間はだいたい、午前十時をまわったあたりだったと思う。
 ――群馬の話 13へ。
#実話怪談 #体験談 #わりと長編




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