群馬の話 1

文字数 758文字

 これは、大学生時代の奇妙な体験。その導入になるお話。
 当時やっと受かった大学が群馬のど田舎にあって、さすがに埼玉の実家からは通いきれないだろうってことになり、おれは生まれて初めてのひとり暮らしをすることになった。
 まあ、あまり真面目とはいえない学生時代を送っていたおれは、お約束のように浮かれまくり、「やっとウザったい親の監視から解放される!」とばかりに勇んで現地の群馬までアパートを探しにゆくことにした。
 契約の件があるからお袋が一緒だったのは少しばかり不満だったけれど、それでもかなりはしゃいでいたと思う。
 大学の所在地は普段の生活にも不便しそうなところだったので、何駅かはなれたわりと都会めな街に拠点をしぼっていざ群馬へ。
 ……で、駅前で最初に目についた不動産屋に入って、そこのお兄ちゃんに連れられて内見した数軒目。
 病院と雑居ビルの谷間にあって日当たりこそわるいが、予算も条件も希望にぴったりあった、我が家の事情的には掘り出しものみたいな好物件にいきなりぶち当たった。
 けっこう古いけどリフォームも済んでるし、駅からもわりと近い。
 おまけに駐輪場まで無料でついてくる。
 ふたつ返事でその鉄筋三階建てのアパートに唾をつけたおれとお袋は、スポンサーの親父の合意を得るために、とりあえず内金だけして帰宅。
 ところが予想外の良物件に納得した親父のゴーサインも出て本契約の連絡を入れると、「すみません、じつは……」と急に不動産屋が切り出した。
 いま思えばこのときに不審がっておけば、あとであんな薄気味わるい思いをせずに済んだのかもしれない。
 ――群馬の話 2へ。
#実話怪談 #体験談 #わりと長編




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