群馬の話 13

文字数 682文字

 ただまぁ、そのお姉さんがそこまで重要な人物かというと、わりとここから先は深くかかわってくるわけではない。見た目は普通な感じだけど、ちょっとそそる凛とした雰囲気の地味美人だったから、おれとしても残念ではあるんだけども。
 で、思わず「あっ!」っておれが声出しちゃったもんだから、お姉さん、えらいオーバーリアクションでビクッとしながらこっちを振り向いた。
 ……礼儀? なにそれおいしーの?
 くらいにしかわきまえてない当時のおれは、当然のように引っ越しの挨拶もしてないから、じつはお姉さんとはそれが初対面だった。
「……あの、なんですか?」
 アニメとかマンガなら、そのすぐあとに「警察を呼びますよ!」がつくくらい嫌そうな顔をして、警戒心を剥き出しにするお姉さん。
 逆にテンパってたこっちはしどろもどろになりながら、最近隣の部屋に越してきたばかりなことと、挨拶が遅くなってすみません、だけをどうにかお姉さんにつたえる。
 お姉さんはその要領をえない説明を聞いて、
「ああ……」
 と、どうにか納得はしてくれた。警戒はといてくれなかったけど。
 なんとなく漂う、気まずい空気……。
 そしてそんな空気にさらに追い打ちをかけるようにしゃしゃり出てきたのは、いつでも悪い意味で期待を裏切らないYのやつだった。
「……あの、すみません。ちょっと質問いいっすか? この部屋、なにかあるんですかね。お化けが出るとか?」
 ――群馬の話 14へ。
#実話怪談 #体験談 #わりと長編




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