群馬の話 2

文字数 662文字

「あのお部屋なんですが、タッチの差でべつの方に決まってしまって……でもご安心ください。おなじ物件の中に、急遽空室が出ましたのでそちらをご案内します」
 と、不動産屋の兄ちゃん。
 電話口で困惑しながら伝えてくるお袋の話に、おれもちょっと首をかしげた。急遽空きが出るって、新幹線とか飛行機の座席じゃあるまいし。
 それでも結局、
「条件が一緒なら問題ないんじゃないか?」
 という親父の一声で本契約が決まり、おれとお袋は深く考えず、後日あらためて現地へ向かい無事に手続きが完了した。
 たしかに急遽出たという空き部屋は内見の部屋とおなじ階のふたつ隣で、作り自体も見た感じまったくおなじだった。
 これならまぁ、問題ないか……。
 そのときはおれも、そう思ったものだった。
 お袋がやけに台所を気にしてた以外は。
 ――そして、引越しの当日。
 さすがに引越しまで手伝わせるのは気が引けたおれは、妙に心配して手伝いにきたがったお袋をなだめて、引越し屋の運び込んだ荷物をひとりで荷解きし始めた。
 せっかく手に入れたおれの城を、親にいじくりまわせれるのも嫌だったからね。
 野郎のひとり暮らしだからたいした荷物があるわけでもなく、それでも引越しは一日かけてほぼ完了した。
 でも最初の変な現象は、そんな浮かれぎみのおれが疲れてうとうとした、初日の晩からさっそく始まったのだった。
 ――群馬の話3へ。
#実話怪談 #体験談 #わりと長編




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