つくえのした

文字数 489文字

 わたしには、むかしからよく見る夢がある。
 叶える夢、ではなく、よる寝るときに見るあの夢だ。
 これは小さいころに目の手術をした、わたしだけが見られる夢。
 ……四歳か、五歳くらいだろうか?
 夢のなかにでてくる女の子は、いつもうずくまって背中をむけている。
 だからわたしからは、その子の表情がわからない。
 でもきっと、あれは目を提供してくれた女の子。
 たぶん、「私の目はどう? たくさん楽しいものを見ている?」
 と、わたしにそっとあいにきてくれているのだ。
 だからわたしは、いつもその背中にむかってこう答える。
「現実は楽しいことばかりじゃないけど、いろいろ見えているよ」
 これもあなたのおかげだね、ありがとう。と……。
 ――そして昨日。
 わたしはやっと、深夜のオフィスで彼女とであうことができた。
 連日の残業にいそしむ、そのデスクの下。
 彼女は足の間にうずくまり、からっぽの目でわたしを見あげてこういった。
「……ねぇ、それって楽しいこと?」
#ホラーポエム




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