本日ハ晴天ナリ

　雨が降っているので、腹が減った。
　腹が減ったので、ナタを持ってスクランブル交差点まで狩りに出かけた。
　濡れそぼる紫陽花のような傘の群れめがけて、思い切りナタを振り下ろす。すると逃げまどう有象無象の悲鳴が、狂おしいまでの空腹を満たしてくれる。
　そして血だまりのなかに突っ伏した女が、柘榴のように割れた顔でこう言った。
「……本日は晴天なり」
　と、そこで妄想から醒めた私の視界に、まばゆいばかりの陽光が降りそそぐ。
　私は満足して、ラーメンのカップにお湯をそそいだ。
　――ある殺人鬼の日記より抜粋。
#ホラーポエム