群馬の話 18

文字数 643文字

 そうして暮らしてるうちに、気がつくと幽霊との同棲生活は一年たっていた。
 おれも無事に二年生に進級できて、バイトだの空手サークルだのに駆けまわり、ぼちぼちと青春を謳歌していた。ちなみにYはとうとう通うのが面倒になって大学にこなくなり、のちのちめでたく留年が決定する。が、それは別の話。
 閑話休題――。
 そのころになるとカチャカチャ音にも這いずり音にもすっかり慣れて、おれも「あ~、またやってるなぁ」くらいにしか思わないようになっていた。
 どころか、音がし始めるのを待って、幽霊の気配を感じてから自家発電にとりかかったりするようにもなっていた。……たまにね。
 でも気を遣ってくれてるのか、そんなときはすぐに音も気配も止んだ。
 それはそれで、背徳感で妙に興奮した。
 うすい本とかエロSSじゃないから手伝ってくれるようなことはなかったけど、もしかすると幽霊もちょっと恥ずかしがってたのかもしれない。
 またそれはそれで……ではあるんだけど、いまにして思うと「居直った思春期男子の暴走はおっかねぇなぁ」と自分でも思う。
 だから恋愛感情とはやっぱり違うんだけど、当時のおれは幽霊との同棲生活を、ネタじゃなくある程度は楽しみ始めるようになっていた。
 そんな話をすると友人たちは、「バカじゃん!」と声をそろえて祝福してくれた。
 ――群馬の話 19へ。
#実話怪談 #体験談 #わりと長編




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