群馬の話 27

文字数 725文字

 で、それから翌日になって、無事に引っ越しは完了。ながながと引っ張ったわりにはたいした事件もなく、このお話もこれにて終了……と言ったら、やっぱりここまでお付き合いいただいた皆さんには怒られるだろうか?
 でも脚色なしの「リアルな実話怪談」なんて、本当はこんなもの。
 ろくに内見もしなかったつぎのアパートも、部屋の壁中に前の住人が残した「奇妙な文様を描いた張り紙」がしてあったり、ふろ場の排水溝にごっそり長い髪の毛が詰まったままだったりもしたけど、それはまたべつのお話。
 とはいえ、そっちの部屋は洗い物の音がしたり、部屋の中を幽霊が徘徊する音がしたり、そういう不確かな現象は一切なかった。
 ……あったのは、もっと具体的な現象だったからね。
 まあ、それはまたいつか続・群馬の話でするとして――。
 そんなこんなでわりと気色がわるかったものの、今度は奇妙な同居人もいないアパートで、おれの大学生活は仕切り直しになった。
 例のH先輩にも直接部屋を見にきてもらったけど、「あぁ、ここなら大丈夫なんじゃない?」と太鼓判を押してくれた。
 ちなみに張りめぐらせてあった奇妙な張り紙は、H先輩も見たことがないらしく、なにかのインチキ宗教のお札かなんかじゃないかってことだった。
「べつになにも感じないから、燃えるゴミの日に捨てちゃって問題なし」
 とのこと。
 というわけで、これでこの話はおしまい。にはなるんだけど……。
 皆さんに怒られないよう、最後にちょっとだけオチらしい話もしておこうと思う。
 ――群馬の話 28へ。
#実話怪談 #体験談 #わりと長編




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