飛び出し注意

文字数 564文字

 公園を通り抜けようとしてふと気づくと、木馬がひとりでにゆれていた。
 子供がまたがって遊ぶ、バネじかけでゆれるあの木馬だ。
 きぃ、きぃ、きぃ、キキキ……。
 どこか癇に障る音を立てながら、ゆらゆらと木馬はゆれつづける。
 ぞっとして踵をかえすと、いつの間にか振り向いたさきに男の子が立っていた。ストライプのTシャツを着た、肘からさきの右腕がもぎとれた男の子だ。
「……ぼくね、ずっとここで待ってたの」
 男の子は、半分つぶれた青白い顔でささやく。
 そういえばむかし、この顔をどこかで見たことがあるような気がする。
 この公園の入口に立てかけてあった、古ぼけた看板――いまは撤去されてしまったが、確かそこには、ひき逃げの目撃者を探しています、とそう書いてあったはずだ。
「だから、今度はおじちゃんの番だよ」
 じりじりと迫ってくる男の子に、私は耐えきれなくなって公園を飛び出した。
 つぎの瞬間、急ブレーキの音があたりに響きわたり、全身を叩きつける強い衝撃とともに私の意識は消滅した。
 そして公園の入口には、また新しい看板が立てかけられる。
 今日も木馬は、きぃきぃと耳障りな音を立ててゆれているだろう……。
#ホラーポエム






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