群馬の話 19

文字数 690文字

 本当はこの辺で終われる予定だったんだけど、たぶんあと九~十話くらい。
 ――と、そんなわけで。
 おれが幽霊と同棲してるってネタは、意外と当時の友人たちにはウケていた。あいさつがわりに「昨日は出たの、カノジョ?」から始まって、「何本ヌイた?」だの「籍入れちゃえばいいじゃん」みたいな、仲間うちで会話が詰まったときの定番ネタとしても、あんがい重宝されるようになっていた。
 そのうち面白がって、おれの部屋に泊りにくるやつなんかも出てきたりした。
 サービス精神旺盛というかなんというか、そんなときでも幽霊は、律儀に洗い物をしたりカーペットのうえを歩いたりしてくれた。音だけでだけど。
 中には合コンと称した女漁りのときに無断でこの話を披露して、さんざんみんなで自家発電ネタを笑ったあげく、おめあての女の子としけ込むきっかけにして、美味しい目にあってたやつなんかもいたらしい。ちなみに、おれへの還元はなにもなかった。
 それでも当時のおれは、
「話題の中心になりやすいし、なんか気分いいからこの生活も悪くない」
 くらいに思って、有頂天になっていた。
 とんだかまってちゃんである。
 でも、たまにはおれの健康のこととかも気にしてくれて、
「それって、いまはよくてもそのうちいろいろ影響出るんじゃない?」
 と言ってくれる、奇特なやつもひとりだけいた。
 もちろん、そいつが言っているのは「悪い影響」という意味でのことだった。
 ――群馬の話 20へ。
#実話怪談 #体験談 #わりと長編




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