先輩の話

文字数 606文字

 これは、おれが高校二年生のときの話。
 当時空手部に所属していたおれは、部活が終わって家に帰ってきてから、居間でテレビを見ていた。たしかそのころ流行ってた、拳法アニメとスケバンドラマの三十分×二で一時間わくをつかった、中高生ターゲットのアイドルわくだったと思う。
 どちらも見終わって、さて飯でもくうか……と顔をあげると、ふとテレビのうえに設置したビデオデッキの時計が目にはいった。
 忘れもしない、20:02の緑色のデジタル表示。
 そのときは、「なんでこれがこんなに気になるんだ?」と思った。
 が、その翌朝学校にきて、時間の意味がなんとなくわかる。
「……え~、それと最後にお知らせがあります。機械科三年のKくんが、ゆうべバイクの事故で亡くなりました」
 朝のHRで、担任の教師が事務的にそう告げた言葉。
 機械科三年のKくん。まちがいなく、昨日も一緒に稽古した先輩の名だ。
 そのあとすぐ担任につめよると、酒をのんでバイクに乗って出かけた先輩は、路肩に駐車してあったトラックに突っ込んで、首の骨をやられて即死だったらしい。
 その時刻が、おおよそ午後八時過ぎごろ。
 ……きっとK先輩、自分が死んだの知らせにきてくれたんだなぁ。
 と、いまでもおれはそう思っている。
#実話怪談 #体験談 #ショートショート




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