無限煉獄
文字数 573文字
気がつくと、いつの間にか回廊のなかをさまよっていた。
回廊の奥にはじっとりと闇がこごっていて、さらに先へと道はつづいている。
――おかしいな。
たしか私は、不意に眩暈をおぼえて病院へ運ばれて……。
妻につきそわれ、診察室へと入って、それで……。
すると足元から、しわがれた声がした。
ふと我に返って視線を落とすと、回廊の床に老婆の顔が浮かんでいる。
「ここは無限迷路です。天国と地獄の狭間にある、罪をあがなうための刑場ですよ」
なるほど、それで私はいまここに……。
そう思った瞬間、どこかで私を呼ぶ妻の声がした。
「……あなた、あなた、しっかりしてください、あなた!」
驚いて顔を上げると、そこはさっき運び込まれた病院の診察室だった。
「もう、急にぼうっとするから、なにかと思うじゃないですか」
「ああ、これはすまない」
やはりあれは、眩暈が見せたただの白昼夢だったのか。
ほっと息を落として診察室を出ると、そこにはまた回廊がつづいていた。
「だから言ったでしょう? ここは無限迷路だって……」
背後から掛けられたしわがれた妻の声に、私はようやく思い出す。そういえば、煉獄とは現世をさす言葉だったのだな、と。
#ホラーポエム
回廊の奥にはじっとりと闇がこごっていて、さらに先へと道はつづいている。
――おかしいな。
たしか私は、不意に眩暈をおぼえて病院へ運ばれて……。
妻につきそわれ、診察室へと入って、それで……。
すると足元から、しわがれた声がした。
ふと我に返って視線を落とすと、回廊の床に老婆の顔が浮かんでいる。
「ここは無限迷路です。天国と地獄の狭間にある、罪をあがなうための刑場ですよ」
なるほど、それで私はいまここに……。
そう思った瞬間、どこかで私を呼ぶ妻の声がした。
「……あなた、あなた、しっかりしてください、あなた!」
驚いて顔を上げると、そこはさっき運び込まれた病院の診察室だった。
「もう、急にぼうっとするから、なにかと思うじゃないですか」
「ああ、これはすまない」
やはりあれは、眩暈が見せたただの白昼夢だったのか。
ほっと息を落として診察室を出ると、そこにはまた回廊がつづいていた。
「だから言ったでしょう? ここは無限迷路だって……」
背後から掛けられたしわがれた妻の声に、私はようやく思い出す。そういえば、煉獄とは現世をさす言葉だったのだな、と。
#ホラーポエム