ラブユーズド
文字数 759文字
「お客様、お荷物をお預かりしております」
バツイチでホテル暮らしのTさんは、フロントでそう声をかけられて驚いた。
なぜなら、Tさんのホテル住まいは周知の事実でも、どのホテルに滞在中かの詳細はだれにも伝えたおぼえがなかったからだ。
――おかしいな、そんなはずはないんだけれど。
不可解には思ったものの、公共の場で揉め事をおこすのもみっともない。
「あ、ああ、ありがとう」
にこやかに笑ってその場をとりつくろうと、とりあえずTさんは小包を受け取って自分の部屋にもどった。小包は中くらいの紙袋で、見た目よりもずしり、と重量がある。ベッドに放り出すと、はらりと一枚のメッセージカードがこぼれ落ちた。
「……ん、なんだこれ?」
いぶかしく思ったTさんがカードを手に取ると、そこには『これは折半で』と見慣れた文字が――。調停中の書類でも離婚届でも見た、忌々しいあの文字だ。
「まったく、どういうつもりだ、アイツ……」
それでピンときたTさんは、カッと込み上げた怒りを静めながら呟く。
それはまぎれもなく、家屋から資産、あげくは愛娘の親権まで容赦なくTさんから毟り取っていった、かつて妻と呼んだあのオンナの文字だった。
――折半もくそもなかろうに、いまさらなにを……。
苛立ちまぎれに、Tさんは手荒く紙袋を破り捨てる。するとなかから、ごろりとカビまみれの赤黒い塊がいくつか転げ出した。ひっ、と声をもらして凝視すると、それは妻に奪われた愛しい娘だった。
それもきっちり、半分だけ。
……そして虚ろな目で立ち尽くしたTさんはコキコキと首を二度鳴らすと、夕食がわりに娘の好物だった牛丼を缶ビールで流し込む。
ふと目を落とした小包のパッケージには、大きく『LOVE USED』と書いてあった。
#ホラーポエム #リクエスト
お題提供、初代てぃあらさま
バツイチでホテル暮らしのTさんは、フロントでそう声をかけられて驚いた。
なぜなら、Tさんのホテル住まいは周知の事実でも、どのホテルに滞在中かの詳細はだれにも伝えたおぼえがなかったからだ。
――おかしいな、そんなはずはないんだけれど。
不可解には思ったものの、公共の場で揉め事をおこすのもみっともない。
「あ、ああ、ありがとう」
にこやかに笑ってその場をとりつくろうと、とりあえずTさんは小包を受け取って自分の部屋にもどった。小包は中くらいの紙袋で、見た目よりもずしり、と重量がある。ベッドに放り出すと、はらりと一枚のメッセージカードがこぼれ落ちた。
「……ん、なんだこれ?」
いぶかしく思ったTさんがカードを手に取ると、そこには『これは折半で』と見慣れた文字が――。調停中の書類でも離婚届でも見た、忌々しいあの文字だ。
「まったく、どういうつもりだ、アイツ……」
それでピンときたTさんは、カッと込み上げた怒りを静めながら呟く。
それはまぎれもなく、家屋から資産、あげくは愛娘の親権まで容赦なくTさんから毟り取っていった、かつて妻と呼んだあのオンナの文字だった。
――折半もくそもなかろうに、いまさらなにを……。
苛立ちまぎれに、Tさんは手荒く紙袋を破り捨てる。するとなかから、ごろりとカビまみれの赤黒い塊がいくつか転げ出した。ひっ、と声をもらして凝視すると、それは妻に奪われた愛しい娘だった。
それもきっちり、半分だけ。
……そして虚ろな目で立ち尽くしたTさんはコキコキと首を二度鳴らすと、夕食がわりに娘の好物だった牛丼を缶ビールで流し込む。
ふと目を落とした小包のパッケージには、大きく『LOVE USED』と書いてあった。
#ホラーポエム #リクエスト
お題提供、初代てぃあらさま