深夜行

文字数 314文字

 くさむらを刈り割って這い出すと 線路が一本だけ延びていた
 血溜りのさきにやっと見つけた、赤錆びた線路だ

 忘却の果てに横たわる 朽ちた駅舎のプラットホーム。
 六つのうち四つが欠けたベンチに背をあずけ、
 駅長は退屈そうに ちびた紫煙をくゆらせている

 こいつは街に向かうのかい?
 尋ねると「さぁ」とだけ答える片腕は
 根元のところから 袖が風にたなびいていた

「行く先が煉獄なら、帰る道はきっとドブ泥の底だろうよ」

 ならば天を仰ぎ 胸を張って進もう
 振り向くひまも 俯くひまも 人生にはないのだから
#ホラーポエム




ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み