郡馬の話 17

文字数 790文字

 じゃあ、お姉さん以外の誰かとはそれ以上の関係になったのか? と聞かれれば、肉体的にではないけど、やっぱりなるにはなったんだろうと思う。
 思う、っていうのは自分のことなのに随分無責任だけど、もったいつけても仕方ないので白状すれば、たぶん誰でも予想がついたように、おれが感情移入していった相手はおれの部屋にとり憑いている「幽霊」だった。
 ……ネタだろうって?
 まあ、正直にいえばネタ半分で本気半分。
 実際、そのころの精神状態が正常だったかどうかはおれにもよくわからないし、たぶんそこを掘り下げると「霊に思考をあやつられた」とか、幽霊が一方的に悪いみたいに聞こえちゃうだろうから、「ちょっと変わった昔話」としてこの話は聞いてほしい。
 ――なんにせよ。
 だんだんおれは、自分の部屋の幽霊を「女性」として意識するようになっていた。
 もちろんそれは、彼女との奇妙な同居生活が当たり前の日常になってたからなのもあるし、たまに世間話をする隣のお姉さんが、「う~ん、気配くらいは感じるけど、たぶん女の人であってるよ」って教えてくれたのもあって、なんとなく幽霊にお姉さんの面影をかぶせてたからなのもあるとは思う。
 まぁほら、そこは思春期男子だからねぇ。
 余談だけど、お姉さんは人の生死の場に立ち会う看護師だから、その手のものとも波長が合いやすい体質になっていたらしいとのこと。
 それとあとはアレかな……。
 おれも野郎のひとり暮らしだから、変な話、あっちも自己処理するでしょ?
 そんなとき、「もしかして、いまも幽霊に見られてんのかな?」なんて思うと、妙に興奮して作業がはかどったりしたことは、はずかしながら否定できない。
 ――群馬の話 18へ。
#実話怪談 #体験談 #わりと長編




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