ピーチクぱーちく

文字数 409文字

 勝者であれ敗者であれ、傷の舐め合いほど見苦しいものはない。
 所詮、自意識の化け物たちの社交場なんてのは、そんなものか……。そう見切りをつけかけたところで、不意にぷかりと紫煙を吐いた園長はこう言った。
「まあ、それが因業ってもんだろう。お前さんだって、これ見よがしのあのおばちゃん――失敬、お嬢ちゃんを(わら)えるほどお偉い何某かい?」
 突きつけられた言葉にカッとなったおれは、気がつくと園長の首根っこをちからずくで締め上げていた。
「……そうそう、いまはそれでいい」
 そんな園長の断末魔が、おれの鼓膜をびりびりと振動させる。
 ぐにゃりとなった園長の死骸を山頂に埋めながら、おれは「ありがとうございました」と心の底からこうべを垂れた。
 ――滝はごうごうと音を立てて、悠久のときを瀑布に刻んでいる。
#ホラーポエム




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