第29話 リネハン伯爵邸の夜会 屋敷からの脱走と王太子殿下
文字数 1,288文字
まずいことに、騒ぎを聞きつけて兵士がやってきた。
行けるところまで行こうと私たちは廊下を走る。何とか1階に降りなきゃ、兄様たちと合流できない。
バラバラと兵士が集まってきて、私たちは足を止めざるをえなかった。
止まった弾みでランプも落としてしまった。中の油に引火したけど、所詮は石造りの建物。
廊下では燃える物も無いので、油が尽きたら火は消えるだろう。時間との勝負。
まだだ、もう少し。
エイリーンには、先程と同じ指示を出している。私はもう一つの袋から、こっそりある物を取り出していた。
完全に兵士たちに取り囲まれる。
私は、火の中に取り出した塊を投げ入れて、エイリーンの布の中に入れてもらってきつく目を閉じた。
瞬間、閃光を放つ。
マグネシウム(※)。火の中に入れると直視不可な閃光を放つ。
ただ、有効範囲が狭いので、なるべく兵士を集める必要があったのだ。
すぐ前にいた兵士に体当たりするように押しのけ走る。その拍子にハバネロ+αの袋が外れ中身が舞う。
やばっ。
慌ててエイリーンの手を引っ張って私の前に出した。
狭い廊下の事。案の定、粉じん爆発は起きた。
小規模なので殺傷能力は無かったと信じたいけど、元々の埃に加えての…である。少し飛ばされた。
頑張って庇ったので、エイリーンは無傷だ。私は少し擦り傷を負った。
小規模でも爆発に巻きこまれて、擦り傷程度で済んでるので御 の字だと思う。お陰で階段のところまで来れた。
下に人影が見える。
「アル兄様」
兄がパッと振り返る。手には剣を持っていた。
「リナ。探したぞ」
私たちは、下に降りていった。もう安心。
兄は私に手を伸ばそうとして、エイリーンに気づく。
「そちらは……」
「アル兄様、彼女をお願いします」
それだけで察してくれる。エイリーンに礼を執り。
「こちらへ」と促す。エイリーンも素直に従った。
兄がすれ違いざまに
「近衛騎士団が来ている」
とだけ言うと、後はエイリーンを誘導して行ってしまった。
そういえば、制服の違うのが入り交じってる。
近衛騎士団は、王族直属……まさか。
「以前、私はエイリーンに近付くなと、言ったはずだがな」
「ジ……王太子殿下」
今まで戦ってたのだろうか、抜き身の剣を持ってすぐ近くまで来ていた。
かがり火に、照らされたせいか金髪がすごくキラキラして綺麗。
一瞬、みとれてたが、ここは学園では無い事を思い出す。すぐさま、礼を執った。
「これで、満足か?」
怒ってる。
「思うまま突っ走り、こんな騒ぎを起こして。エイリーンを巻き込み、あまつさえ命を危険に晒させて…」
冷たい声だ。頭を下げているので表情を窺い見ることは出来ないが、あの断罪のシーンのような顔をしているのだろう。
鼻先に光る物が見えた。剣を突きつけられてる。
このまま、斬られるのだろうか。頭の芯は妙に冷静だ。
死にたくはないけど、なんだか実感がわかない。
ただ、セドリックや兄に気づかれなければ良いなとは思った。
※この世界に『精製されたマグネシウム』がゲーム的、ご都合主義で有るということにしといて下さい。すみません、よろしくお願いします。
行けるところまで行こうと私たちは廊下を走る。何とか1階に降りなきゃ、兄様たちと合流できない。
バラバラと兵士が集まってきて、私たちは足を止めざるをえなかった。
止まった弾みでランプも落としてしまった。中の油に引火したけど、所詮は石造りの建物。
廊下では燃える物も無いので、油が尽きたら火は消えるだろう。時間との勝負。
まだだ、もう少し。
エイリーンには、先程と同じ指示を出している。私はもう一つの袋から、こっそりある物を取り出していた。
完全に兵士たちに取り囲まれる。
私は、火の中に取り出した塊を投げ入れて、エイリーンの布の中に入れてもらってきつく目を閉じた。
瞬間、閃光を放つ。
マグネシウム(※)。火の中に入れると直視不可な閃光を放つ。
ただ、有効範囲が狭いので、なるべく兵士を集める必要があったのだ。
すぐ前にいた兵士に体当たりするように押しのけ走る。その拍子にハバネロ+αの袋が外れ中身が舞う。
やばっ。
慌ててエイリーンの手を引っ張って私の前に出した。
狭い廊下の事。案の定、粉じん爆発は起きた。
小規模なので殺傷能力は無かったと信じたいけど、元々の埃に加えての…である。少し飛ばされた。
頑張って庇ったので、エイリーンは無傷だ。私は少し擦り傷を負った。
小規模でも爆発に巻きこまれて、擦り傷程度で済んでるので
下に人影が見える。
「アル兄様」
兄がパッと振り返る。手には剣を持っていた。
「リナ。探したぞ」
私たちは、下に降りていった。もう安心。
兄は私に手を伸ばそうとして、エイリーンに気づく。
「そちらは……」
「アル兄様、彼女をお願いします」
それだけで察してくれる。エイリーンに礼を執り。
「こちらへ」と促す。エイリーンも素直に従った。
兄がすれ違いざまに
「近衛騎士団が来ている」
とだけ言うと、後はエイリーンを誘導して行ってしまった。
そういえば、制服の違うのが入り交じってる。
近衛騎士団は、王族直属……まさか。
「以前、私はエイリーンに近付くなと、言ったはずだがな」
「ジ……王太子殿下」
今まで戦ってたのだろうか、抜き身の剣を持ってすぐ近くまで来ていた。
かがり火に、照らされたせいか金髪がすごくキラキラして綺麗。
一瞬、みとれてたが、ここは学園では無い事を思い出す。すぐさま、礼を執った。
「これで、満足か?」
怒ってる。
「思うまま突っ走り、こんな騒ぎを起こして。エイリーンを巻き込み、あまつさえ命を危険に晒させて…」
冷たい声だ。頭を下げているので表情を窺い見ることは出来ないが、あの断罪のシーンのような顔をしているのだろう。
鼻先に光る物が見えた。剣を突きつけられてる。
このまま、斬られるのだろうか。頭の芯は妙に冷静だ。
死にたくはないけど、なんだか実感がわかない。
ただ、セドリックや兄に気づかれなければ良いなとは思った。
※この世界に『精製されたマグネシウム』がゲーム的、ご都合主義で有るということにしといて下さい。すみません、よろしくお願いします。