第94話 セドリックと私の婚約披露の夜会
文字数 2,055文字
社交界シーズンに入る前に、婚約披露の夜会の準備で、リナはクランベリー公爵邸に入る予定だった。子爵令嬢としてのマナーや教養では、公式に王族の前にも出る公爵夫人としてやってはいけないから、講師について学ぶように段取りが付けられていたからだ。ちなみに段取りを交渉したのはうちの父だ。
それを今回前倒しをして入りたいと、クランベリー公に申し出た。
クランベリー公は、礼儀や社交の事に無頓着で……自分は完ぺきに出来るくせに……踊れないものは踊れなくて良いし、礼儀だって今のままで何の不都合があるのかと、言われてしまったのだけれども。
それでも、前倒しして付けてくれた。
はっきり言おう。
剣の練習の方がマシだ。始めたばかりの、ボロボロ状態の時の精神状態より悪い気がする。
でも、とりあえず何とかなった、多分。
同じ邸内にいるはずなのに、セドリックには会っていない。
いや、セドリックは私が、同じ邸内にいると思ってないと思う。
公爵邸は、かなり広いし、放課後に練習して、夜はちゃんと学園内の寮に戻っていたから。
そんなこんなで、婚約披露の夜会当日が来た。
ドレスや小物を、公爵家でそろえて貰い。お肌も整えられて。
なんか、もういっそ可愛らしさを強調しましょうって事で、可愛らしいです。
セドリックがロリコンに見えます。笑える。
公爵家、子爵家主催とはいえ、夜会は王宮で開催された。
うちはともかく、セドリックの家は準王族扱いの家柄だからね。
なんかもう、参加メンバーがカオスです。
国王と王妃は最初顔見せしただけだけど。他の王族の方々は残っているし、私のクラスメイトの下位貴族令嬢方も招待されている。
ここまで、上から下まで幅広い階級がそろっている夜会なんて、デビュタントくらいではないだろうか。
主立った方々に二人で挨拶周りをして、やっと人心地付いた。
セドリックは仕事上、相手をしないといけない方々や友人と雑談をしている。
私は、クラスメイトと雑談してた。側には、さりげなくサイラスがいたり、クリフォードがいたりするけれど。
そうしている内に、4~5人の少し豪奢なドレスを着たお姉様方がやってきた。
「リナ・ポートフェン様。この度はご婚約おめでとうございます」
「ありがとうございます。マーティンソン公爵夫人」
スッと礼をとる。さっき挨拶した人だ。えっと、王妃様の親戚だっけ。
ちょっと、きつめの美人さんだ。
「セドリック様のお相手は、ずいぶん可愛らしい方なのね。失礼ですが、デビュタントはもうお済みなのかしら」
「昨年。拙いながら、国王陛下に拝謁賜りました」
「そうですの。昨年は社交界であまり」
「これは、マーティンソン公爵夫人ではないですか。見る度にお美しくなられて、公爵婦人に収まっているのがもったいない」
サイラスが、私たちの会話を遮って挨拶をはじめた。
「あら、サイラス様。お久しゅうございます。ですが、いつから、女性同士の語らいを邪魔するような無粋な方になられたのでしょうか」
サイラスが「これは…」手厳しいと、言いかけたのを遮って私も続ける。
「同感ですわ。せっかく会話を楽しんでおりましたのに」
おバカだねぇ~。女の戦いに男が口だしたら、双方から攻撃受けるに決まってるだろうに。
「マーティンソン公爵夫人様。たしか、昨年のお話でしたわよねぇ」
「シェリルでいいわ。私も、リナ様と呼んで良いかしら」
「もちろんでございますわ。シェリル様。わたくし、しがない子爵令嬢ですので、昨年はみなさまが参加するような夜会にはとうてい参加できませんでしたの」
「まぁ、率直におっしゃるのね」
「普段は、騎士団に所属しておりますもので、つい率直な物言いが身に付いてしまったのですわ。お許し下さいませ」
「騎士団に? 手を見せて頂けます?」
「え? あ……はい。マメが出来てあまりきれいな手では無いですが」
私は夜会用の手袋を外し、両方の手のひらをシェリルの前に差し出す。
「かたいですわね。マメも……」
なんか、みんなから見られたり触られたりで、恥ずかしい。綺麗な貴族令嬢の手じゃ無くなっているからね。
「わたくしね。クランベリー公が、貴女のお父様を取り込むために、騎士団司令官の地位を与えたのだと思っておりましたのよ」
半分正解……かな? 私の父ではなく、私を取り込むためだから。
「女性の身で、苦労なさったのよね。うちの弟なんか剣の習い始めは泣いてばかりでしたもの……」
他の方々も、同意してる。ここは素直に同情されておこう。
高評価で、うわさを流して頂けるとありがたい。
貴族社会とか関係無く女性は自身の上下関係が曖昧な分、人間関係が複雑だ。
空気を読み、同調する。
全員に好かれるのは不可能だけど、男性に庇われて自ら敵を作るなんて愚かなマネはしたくない。
だからごめんね、サイラス様。一緒に攻撃してしまって。
それを今回前倒しをして入りたいと、クランベリー公に申し出た。
クランベリー公は、礼儀や社交の事に無頓着で……自分は完ぺきに出来るくせに……踊れないものは踊れなくて良いし、礼儀だって今のままで何の不都合があるのかと、言われてしまったのだけれども。
それでも、前倒しして付けてくれた。
はっきり言おう。
剣の練習の方がマシだ。始めたばかりの、ボロボロ状態の時の精神状態より悪い気がする。
でも、とりあえず何とかなった、多分。
同じ邸内にいるはずなのに、セドリックには会っていない。
いや、セドリックは私が、同じ邸内にいると思ってないと思う。
公爵邸は、かなり広いし、放課後に練習して、夜はちゃんと学園内の寮に戻っていたから。
そんなこんなで、婚約披露の夜会当日が来た。
ドレスや小物を、公爵家でそろえて貰い。お肌も整えられて。
なんか、もういっそ可愛らしさを強調しましょうって事で、可愛らしいです。
セドリックがロリコンに見えます。笑える。
公爵家、子爵家主催とはいえ、夜会は王宮で開催された。
うちはともかく、セドリックの家は準王族扱いの家柄だからね。
なんかもう、参加メンバーがカオスです。
国王と王妃は最初顔見せしただけだけど。他の王族の方々は残っているし、私のクラスメイトの下位貴族令嬢方も招待されている。
ここまで、上から下まで幅広い階級がそろっている夜会なんて、デビュタントくらいではないだろうか。
主立った方々に二人で挨拶周りをして、やっと人心地付いた。
セドリックは仕事上、相手をしないといけない方々や友人と雑談をしている。
私は、クラスメイトと雑談してた。側には、さりげなくサイラスがいたり、クリフォードがいたりするけれど。
そうしている内に、4~5人の少し豪奢なドレスを着たお姉様方がやってきた。
「リナ・ポートフェン様。この度はご婚約おめでとうございます」
「ありがとうございます。マーティンソン公爵夫人」
スッと礼をとる。さっき挨拶した人だ。えっと、王妃様の親戚だっけ。
ちょっと、きつめの美人さんだ。
「セドリック様のお相手は、ずいぶん可愛らしい方なのね。失礼ですが、デビュタントはもうお済みなのかしら」
「昨年。拙いながら、国王陛下に拝謁賜りました」
「そうですの。昨年は社交界であまり」
「これは、マーティンソン公爵夫人ではないですか。見る度にお美しくなられて、公爵婦人に収まっているのがもったいない」
サイラスが、私たちの会話を遮って挨拶をはじめた。
「あら、サイラス様。お久しゅうございます。ですが、いつから、女性同士の語らいを邪魔するような無粋な方になられたのでしょうか」
サイラスが「これは…」手厳しいと、言いかけたのを遮って私も続ける。
「同感ですわ。せっかく会話を楽しんでおりましたのに」
おバカだねぇ~。女の戦いに男が口だしたら、双方から攻撃受けるに決まってるだろうに。
「マーティンソン公爵夫人様。たしか、昨年のお話でしたわよねぇ」
「シェリルでいいわ。私も、リナ様と呼んで良いかしら」
「もちろんでございますわ。シェリル様。わたくし、しがない子爵令嬢ですので、昨年はみなさまが参加するような夜会にはとうてい参加できませんでしたの」
「まぁ、率直におっしゃるのね」
「普段は、騎士団に所属しておりますもので、つい率直な物言いが身に付いてしまったのですわ。お許し下さいませ」
「騎士団に? 手を見せて頂けます?」
「え? あ……はい。マメが出来てあまりきれいな手では無いですが」
私は夜会用の手袋を外し、両方の手のひらをシェリルの前に差し出す。
「かたいですわね。マメも……」
なんか、みんなから見られたり触られたりで、恥ずかしい。綺麗な貴族令嬢の手じゃ無くなっているからね。
「わたくしね。クランベリー公が、貴女のお父様を取り込むために、騎士団司令官の地位を与えたのだと思っておりましたのよ」
半分正解……かな? 私の父ではなく、私を取り込むためだから。
「女性の身で、苦労なさったのよね。うちの弟なんか剣の習い始めは泣いてばかりでしたもの……」
他の方々も、同意してる。ここは素直に同情されておこう。
高評価で、うわさを流して頂けるとありがたい。
貴族社会とか関係無く女性は自身の上下関係が曖昧な分、人間関係が複雑だ。
空気を読み、同調する。
全員に好かれるのは不可能だけど、男性に庇われて自ら敵を作るなんて愚かなマネはしたくない。
だからごめんね、サイラス様。一緒に攻撃してしまって。