第23話 デューク・リネハンからのお誘い

文字数 1,304文字

 セドリックからの提案の数日後、クラスメイトの男の子が私に話しかけてきた。
「デューク・リネハンと申します」
 教室でいきなり近付かれて、誰? って思って見てたら、貴族の礼を執られて慌てて礼を返す。

「失礼致しました。リナ・ポートフェンです」
 黒髪で長身の少しかっちりしてる体格。
 それでいて優しい雰囲気を醸し出してる少年は
「同じ教室に半年近くいて、今更自己紹介も無いですよね」
 と言って、にっこり笑う。見る限りなかなかの好青年。
 イケメンの部類だ。

「ご自宅の方には、夜会の招待状をお送りしたのですが」
「招待状は、父が管理しておりますので。申し訳ございません」
「いえ、当然でしょう。そう思いまして、こちらに一通持ってきました」
 白い封筒を渡された。
「僕の誕生祝賀の夜会です。良かったら、僕のパートナーとして参加して頂けないでしょうか」
 もう一度礼を執られた。まずい、私一人の参加になる。
「とんでもございません。私など、上位貴族マナーも何も分かっていない田舎娘でございます。どうか、お許し下さい」
「王太子殿下のパートナーされたときは堂々としていたのに」
「思い出しただけでも、恥ずかしいです」
 本当にね。許されるなら転がりまくりたいくらい、はずい。

「伯爵家の夜会程度だったら、これからも誘われるんじゃない?」
 曖昧に断っていると、いきなり形式的な言葉使いじゃなくなった。
「フォローするから、練習と思ってどうかな? 成人になる誕生会では無いから比較的小規模だし。練習には丁度良いと思うよ」
 これは……断れないかな。この人、会話の主導権握るのが上手だ。
 なんだか、セドリックに似ている。

「そう……ですわね。リネハン様がフォローして下さるのでしたら」
「夜会では、リネハンがたくさんいるから、デュークって呼んでね。リナ嬢」
「はい。デューク様」
 会話の誘導はセドリックより上手だ。
 父は、兄に説得してもらおう。堅く心に誓った。


 夜会の招待は、令嬢の場合ドレスや小物の準備とかもあるので、昨日の今日という感じで誘われたりしない。
 時間があるのは良いのだが、その都度ドレスを新調するとかは勘弁して欲しい。
「パートナーになってもらうんだったら、一度ご挨拶に伺って正式に申し込まないとね」
 と、デュークが言い出した。

「死にたいですか……」
「え?」
 しまった、つい口からぽろっと……。今、顔色悪いと思います、私。
「え……と。私、父と兄が2人いて、その……」
 ああ、しどろもどろだ。
「あ……ああ。なんとなく分かるよ。うちも妹が2人いるから。変な男が寄ってきたら……」
 と言いつつ、ちょっと怖い雰囲気に。
 あ……同類でしたか。

「とりあえず、君のお父様にアポとれたので、今日伺おうと思うのだけど」
 行動が早いな。
「今日……分かりました。兄も一緒で良いですか?」
「もちろん」
 そして放課後、そつなく兄に挨拶をしたデュークと一緒に馬車で久しぶりの実家に戻った。
 兄からは、心底恨めしそうな顔をされたけど。
 巻き込んでくれって言ったじゃん。
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