第8話 フランシスの特訓
文字数 1,432文字
考えなかったわけじゃない。
私が戦場に立つとすれば、フランシス殿下と同じ司令官だ。
それが弱そうな女性だったら、真っ先に狙われるだろう。
今、グルタニカ王国と我が国は、国交を結ぶかどうかの交渉中だ。
結界が閉じてしまって、日程に余裕があるとはいえ。
フランシス殿下も暇ではない。だけど……。
「お飾りでいたくないと言ったら、フランシス殿下は私に剣を教えて下さるのですか?」
私は真剣に訊く。そんな私に、フランシス殿下はへぇ~という顔をして言った。
「いいよ。リナが戦場で生き延びるというのが条件だけどね」
「リナ!」
静止に入ろうとしたサイラスを片手を上げて止めた。
サイラスは本来上官である私には、逆らえない。
フランシス殿下の条件は、そこまでの訓練に耐えるというのなら付き合ってあげるという意味。
たったそれだけの緩い条件だ。ただ、この人の訓練は容赦無いけど。
「はい。では、よろしくお願いします」
私は覚悟を持って、ペコンと頭を下げた。
その日の内に、訓練は始まり。
私はぼろ雑巾の様になった。剣を木剣に代えて無かったら、斬られて死んでいたかもしれない。
訓練用の刃を潰した剣は、当て方が悪ければ真剣同様に斬れるから。
「じゃあ。今日はこの辺にしておこうか」
そう言って、フランシス殿下が訓練場から去っていく頃には、私は全身痛くて起き上がる事も出来なくなっていた。
誰かがそっと抱き上げてくれる。
誰だろうと、重くなった瞼を持ち上げてみるとサイラスだった。
「だ……んちょ……う?」
なんだか、痛ましそうな顔をしている。そんな顔しないでよ。
こうなるって、分かっていて訓練をお願いしたのだから。
「しゃべらなくて良い。医務室に行こうな。その後、セドリックの所に連れて行ってやるから」
優しい。そうね、この腕の中なら大丈夫だわ。
そう思って、私は意識を手放した。
だって、仕方ないのよ。
サイラスもセドリックも、現実が見えていない。
だから、私に本格的な訓練をしてくれないでしょう?
一般の騎士にすら勝てない司令官なんて、戦場ではお荷物にしかならないもの。
私を庇って戦えるほど甘くは無いのよ。戦争は……。
最近は、気が付いたら屋敷の夫婦の寝室のベッドの上なんて事も珍しくなくなった。
サイラスは、訓練場でくったりなっている私を、律義に医務室経由でセドリックに引き渡してくれているらしい。
侍女の人達が湯あみをしてくれていても、私は寝こけているらしいから。
ベッドで意識を取り戻し、横で寝ているセドリックを見付けてホッとしている。
私がうつらうつらしながらでも、意識を取り戻したのに気付いたのか、セドリックが言ってくる。
「なぁ、リナ。家庭に入るっていう選択肢は無いのか?」
セドリックが何だからしく無い事を言っている。
そもそもお義父様を味方に付ける為の条件で司令官を引き受けているのに。
「でも、ジークフリート殿下の参謀になるって」
「別に軍部で無くても良いんじゃない? リナの父親のように宮廷魔導士でもよいのだし」
心配してくれているのかな。
セドリックの側が心地よく感じる。
私は、セドリックの腕の中にすり寄った。
「でも……もう始めちゃったし」
中途半端でやめるくらいなら…………。
そこで、眠さに勝てなくなって思考が止まりそうになる。
セドリックが、私に掛布を掛け直している気配を感じた。
そして、深く抱き込まれたのを感じたのが最後に私の意識は途絶えてしまった。
私が戦場に立つとすれば、フランシス殿下と同じ司令官だ。
それが弱そうな女性だったら、真っ先に狙われるだろう。
今、グルタニカ王国と我が国は、国交を結ぶかどうかの交渉中だ。
結界が閉じてしまって、日程に余裕があるとはいえ。
フランシス殿下も暇ではない。だけど……。
「お飾りでいたくないと言ったら、フランシス殿下は私に剣を教えて下さるのですか?」
私は真剣に訊く。そんな私に、フランシス殿下はへぇ~という顔をして言った。
「いいよ。リナが戦場で生き延びるというのが条件だけどね」
「リナ!」
静止に入ろうとしたサイラスを片手を上げて止めた。
サイラスは本来上官である私には、逆らえない。
フランシス殿下の条件は、そこまでの訓練に耐えるというのなら付き合ってあげるという意味。
たったそれだけの緩い条件だ。ただ、この人の訓練は容赦無いけど。
「はい。では、よろしくお願いします」
私は覚悟を持って、ペコンと頭を下げた。
その日の内に、訓練は始まり。
私はぼろ雑巾の様になった。剣を木剣に代えて無かったら、斬られて死んでいたかもしれない。
訓練用の刃を潰した剣は、当て方が悪ければ真剣同様に斬れるから。
「じゃあ。今日はこの辺にしておこうか」
そう言って、フランシス殿下が訓練場から去っていく頃には、私は全身痛くて起き上がる事も出来なくなっていた。
誰かがそっと抱き上げてくれる。
誰だろうと、重くなった瞼を持ち上げてみるとサイラスだった。
「だ……んちょ……う?」
なんだか、痛ましそうな顔をしている。そんな顔しないでよ。
こうなるって、分かっていて訓練をお願いしたのだから。
「しゃべらなくて良い。医務室に行こうな。その後、セドリックの所に連れて行ってやるから」
優しい。そうね、この腕の中なら大丈夫だわ。
そう思って、私は意識を手放した。
だって、仕方ないのよ。
サイラスもセドリックも、現実が見えていない。
だから、私に本格的な訓練をしてくれないでしょう?
一般の騎士にすら勝てない司令官なんて、戦場ではお荷物にしかならないもの。
私を庇って戦えるほど甘くは無いのよ。戦争は……。
最近は、気が付いたら屋敷の夫婦の寝室のベッドの上なんて事も珍しくなくなった。
サイラスは、訓練場でくったりなっている私を、律義に医務室経由でセドリックに引き渡してくれているらしい。
侍女の人達が湯あみをしてくれていても、私は寝こけているらしいから。
ベッドで意識を取り戻し、横で寝ているセドリックを見付けてホッとしている。
私がうつらうつらしながらでも、意識を取り戻したのに気付いたのか、セドリックが言ってくる。
「なぁ、リナ。家庭に入るっていう選択肢は無いのか?」
セドリックが何だからしく無い事を言っている。
そもそもお義父様を味方に付ける為の条件で司令官を引き受けているのに。
「でも、ジークフリート殿下の参謀になるって」
「別に軍部で無くても良いんじゃない? リナの父親のように宮廷魔導士でもよいのだし」
心配してくれているのかな。
セドリックの側が心地よく感じる。
私は、セドリックの腕の中にすり寄った。
「でも……もう始めちゃったし」
中途半端でやめるくらいなら…………。
そこで、眠さに勝てなくなって思考が止まりそうになる。
セドリックが、私に掛布を掛け直している気配を感じた。
そして、深く抱き込まれたのを感じたのが最後に私の意識は途絶えてしまった。